研究課題
我々は、胚盤胞にES細胞を注入した後に偽妊娠の雌に移植することによりマウスとラットのキメラ動物が作成できることを示した。これまでの観察ではキメラ動物は外見上マウスとラットの中間ではなく胚盤胞を提供した種に類似し、あたかもES細胞が別の種の細胞や組織として振る舞っている様に見える。本研究の中で、マウス・ラットキメラの生物学的特性やエピジェネティックな変更の可能性を解析し、自己非自己の認識がどのようになっているのかの検討を試みた。妊娠は母体が非自己である子供を自分の体内に受け入れるという特殊な系であるが、その機構については不明である。そこでマウス・ラットキメラの系を用いて母体-胎児相互認識メカニズムについての解析を進めた。免疫応答の関与について、マウス←ラットキメラを母体としたときにラット胚の移植を試み、個体発生について検討を行ったがラット胚はリジェクトされることがわかった。免疫機能をほとんど持たない重篤な免疫不全マウスにラットの胚を移植しても同様であった。これら一連の研究で明らかになったのは胎盤が母体と同じ種であれば、胎児に異種の細胞が混ざっていても個体として誕生するということである。そこでマウスの2細胞期胚をテトラプロイドにすることにより胎盤にはなるが胚そのものには発生しないようにしてからラットのES細胞を打ち込み、その様子を観察した。その結果、マウスからラットを誕生させることはできなかったが、免疫不全マウスや、マウス←ラットキメラにラット胚を移植した場合に比べて個体発生がより後期まで進行することが分かった。これらの結果より、発生における母体-胎児相互認識の初期には免疫応答による制御がなされているのではなく、単純な細胞接着性などによる細胞間相互認識機構が主に働いていることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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