研究課題/領域番号 |
24240068
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
但野 茂 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50175444)
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研究分担者 |
横田 秀夫 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, チームリーダー (00261206)
伊東 学 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (00271677)
佐々木 直樹 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (40142202)
藤崎 和弘 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435678)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 生物・生体工学 / 医療・福祉 / 生体分子 / 計測工学 / X線 |
研究概要 |
○骨HAp結晶X線回折計測:牛大腿皮質骨を測定対象として、これまでの広角X線回折に加え、小角散乱X線回折計測開発を引続き行った。これまでの広角測定ではHAp結晶内の10ナノレベルの変位や構造に対し、小角散乱ではHAp結晶粒子間の10マイクロ程度の変位や構造が測定される可能性を検討した。これによりマイクロ骨構造体レベルの変形特性が確認されると予想されたが、小角散乱の場合、測定データには複雑なノイズがのるため、そのデータ処理に工夫が必要であった。その処理方法の開発が必要である。 ○皮質骨残留応力計測:長管骨皮質骨表層の残留応力計測手法を開発した。これまで例のないX線の反射側回折線をイメージングプレートで二次平面計測し、その回折リングの変形状態から高精度に残留応力を計測する手法を検討した。皮質骨内残留応力の発生要因を探った。 ○骨HAp-Col分子ラマン分光計測:骨内HAp/Col分子構造の状態と負荷時の変形挙動をラマン分光による計測手法を開発した。熱変性・疲労変性(加齢相当モデル)による分子構造変化の確認を行った。 ○骨構造体モデル:マイクロ骨構造体(皮質骨、海綿骨)をマイクロCTで観察した。階層複合化した骨組織構造体(Osteon-Lamella)(10-3~10-4m)の変形状態を推定した。顕微鏡下の負荷試験により骨組織構造体の荷重伝達・変形応答特性の測定を行った。骨組織構造体レベルの弾性率/剛性分布の計測手法を検討した。 ○マイクロ骨構造体解析:同心円層状構造のOsteonの詳細な形態や構造を詳細に観察した。海綿骨骨梁1本の弾性率測定方法を開発し、骨梁の弾性率やHAp結晶特性などを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
○骨HAp結晶X線回折計測:広角X線回折については、IPを用いた牛大腿骨骨幹部の表層残留応力計測手法の開発を行い、その精度検証と残留応力発生要因を検討している。計画通り進んでいる。小角散乱X線回折計測手法については、負荷時計測の前例がなく、その現象と回折理論の関連性の基礎的検討を進めており、計画通り進んでいる。 ○骨Col分子ラマン分光計測:骨内HAp-Col分子構造の状態と負荷時の変形挙動をラマン分光で計測する手法を整備し、骨内Colの引張り挙動の計測が可能となった。計画通り進行している。 ○骨細胞変形特性解析:骨細胞を一定の負荷環境下培養した場合の形態変化、変形特性、負荷応答性との関連性を観察する実験手法を検討したが、期待したほど成果が得られていない。骨細胞の負荷環境下におけるHAp結晶構造やCol分子の形成・成長過程を調査する実験手法については、今後の検討課題である。 ○骨構造体モデリング:任意方向負荷による骨組織異方性弾性率とX線回折特性の関係を調査し、マイクロ骨構造体の数理モデル作成を行っている。また海綿骨の構造特性と異方性弾性率の関係を詳細に検討している。この点は当初の計画以上の進展がある。 ○マイクロ骨構造体解析: Osteonの詳細な形態や構造を観察し、骨組織構造体(Osteon-Lamella)断面における弾性率分布の計測手法を検討した。海綿骨の構造と弾性率・強度の関係を骨梁一本のマイクロ引張負荷装置を考案し、骨梁の内部構造を明らかにした。計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
○骨HAp結晶X線回折計測:小角散乱については、骨組織の小角散乱現象と回折理論の関連性を整理し、より実用的な計測手法を引続き考案する。広角散乱については、長管骨皮質骨表層の残留応力計測手法の高精度化をはかる。 ○骨Col分子ラマン分光計測:骨内HAp-Col分子構造の状態と負荷時の変形挙動をラマン分光で計測する手法を引続き検討する。骨内Colの引張り挙動の高精度化を図る。 ○骨細胞変形特性解析:骨細胞を一定の負荷環境下培養した場合の形態変化、変形特性、負荷応答性との関連性を観察する実験を勧める。骨細胞の負荷環境下におけるHAp結晶構造やCol分子の形成・成長過程を調査する実験手法を検討する。 ○骨構造体モデリング:任意方向負荷による骨組織異方性弾性率とX線回折特性の関係を引続き調査する。マイクロ骨構造体の数理モデル作成を行う。 ○マイクロ骨構造体解析: 同心円層状構造のOsteonの詳細な形態や構造、やBone Lamella、Fibril Arrayの階層的構造を引続き詳細に観察する。骨組織構造体(Osteon-Lamella)断面における弾性率分布の計測手法を検討する。海綿骨の構造と弾性率・強度の関係を調査し、海綿骨構造体のマクロな弾性率・剛性との関連を明らかにする。
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