研究課題/領域番号 |
24240076
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐々木 克典 信州大学, 医学部, 教授 (30170666)
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研究分担者 |
阿部 康次 信州大学, 繊維学部, 教授 (00126658)
冨永 貴志 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (20344046)
岳 鳳鳴 信州大学, 医学部, 助教 (20532865)
池田 宇一 信州大学, 医学部, 教授 (30221063)
寺本 彰 信州大学, 繊維学部, 准教授 (40227525)
市川 比奈子 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (50609617)
柴 祐司 信州大学, 医学部, 助教 (70613503)
齋藤 直人 信州大学, 医学部, 教授 (80283258)
友常 大八郎 信州大学, 医学部, 助教 (80283802)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / 細胞のプロファイリング / 網羅的遺伝子解析 / ヒートマップ解析 / 主成分解析 / カーボンナノチューブ / ナノファイバー |
研究概要 |
本研究では独自に開発した技術により多能性幹細胞の特質をプロファイリングし、その特質を生かしながら最適条件で再生医療に応用可能にすることを目的とする。 この目的のため進めてきた具体的な研究開発は、①プロファイリングツール開発 1)未分化から分化への移行を識別する技術開発、2)分化を特定の方向に進める技術、3)特定の分化細胞への移行をライブで把握する技術開発、②プロファイリング指標を基盤にした総合評価による個々の細胞株のプロファイリングの確立である。 プロファイリングの対象は、ヒトES細胞株4種類、ヒトiPS細胞2株、対照として線維芽細胞、脂肪幹細胞の8株である。24年度は未分化状態での細胞株をプロファイリングした。25年度は、それぞれの株から胚様体を形成させることで分化誘導を促し、一方でMEFを除くことで自然に分化する傾向と比較した。主成分解析から、未分化維持されやすい株は分化しにくいことがわかった。しかし、自然分化誘導と比較して、もともと不安定な株が存在すること、安定してかつ分化させやすい極めて理想的な株が存在することがわかった。このように、分化を進める過程で、それぞれの株の特徴が際立ってきた。さらに、未分化、分化にかかわる特有で共通な、かつ個々の株に違いの見える遺伝子も把握できるようになった(友常ら:第11回国際幹細胞学会 2013;友常ら第13回日本再生医療学会 2014)。 最終年度に各多能性幹細胞の分化最終段階のプロファイリングを予定しているが、その中で、もっとも分化させにくい内胚葉系に関して、分化誘導法の改良開発を進めてきた。コストの面から、これまで確立した成長因子、サイトカインを使う方法をではなく、低分子化合を用いた簡便な方法を考案し改良を行った。試行試験を繰り返し安定した方法として確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は多能性幹細胞の細胞株をプロファイリングし、それぞれの細胞の特性を形として表現し、一見して細胞株の違いを判別できるようにすることが目的である。 24年度は未分化状態に焦点をあて、細胞のプロファイリングを実施した。その結果、細胞株間に明確な傾向が存在することを見出した。さらに、ライブで解析するICGを用いた方法を実現するための新規装置の改良を行った(増田ら:第12回日本再生医療学会 2013年)。 25年度の目標は初期の分化傾向の解析であった。そのため未分化から分化への移行に伴う初期変化を捉えるための条件を設定した。当初目標にした胚様体に出現する遺伝子を中心に解析する研究に加え、未分化性を維持する環境から各細胞株を離脱させ、自然に分化する傾向を調べることで細胞株の不安定さという新たな指標の抽出も試みた。これは、申請書に記載した分化初期にネスチン陽性細胞が出現しやすいことの意味を明らかにするために、具体的な方法として具現化したものである。これらのプロファイリングの結果から、未分化状態に見られた細胞株の特徴は、分化傾向においても引きずるが、しかし、さらに株固有の特徴が出現することがわかった。不安定さに関わる研究の内容は、2013年(友常ら:国際幹細胞学会)、2014年(友常ら:日本再生医療学会)に発表された。 次にICGを用いた方法で初期分化、特に肝細胞に向かう細胞のプロファイリングを試みたところ、かなり早い時期からICGを取り込む内胚葉系の細胞が出現してくることがわかり、初期の分化傾向を見るために、この方法が有用であることがわかった(邦武ら:第13回日本再生医療学会、2014)。 以上より特別に研究の進展を阻止するような支障はなく、おおむね研究は遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は8種類の細胞株について、主に網羅的遺伝子解析を行い、分化初期状態、すなわち三胚葉を形成する胚様体、加えてMEFを抜き自然分化傾向を誘導した2群を設定し、プロファイリングした。未分化状態とは異なった株間の差異、類似性が存在することが認められた。さらに、多能性幹細胞を内胚葉系に恒常的に分化誘導できるシステムの改良を図った。低分子化合物を用いることで、分化状態の最終像のプロファイリングを行うための再現性のとれる簡便で安定した方法を開発した。 26年度は、各細胞株由来分化細胞のプロファイリングを実施する。次に、これまで獲得したデータをまとめ、各多能性幹細胞の細胞株の特徴を三次元的に可視化する。そのために、以下の数学的解析を行う。これらの情報を数値化し、3Dプリンターを用い、それぞれの株の立体構造を作り上げる。 (1)プロファイリング指標の抽出:1)抽出指標、再抽出指標の定量化およびそれらを図式化する;2)関連指標の抽出と主に主成分解析を実施する。 (2)指標の定量化による個々の細胞株のプロファイリングの確立:1)指標数値を角度として一般化する;2)個々の細胞株を球形とみなし、中点を基準にZ軸、Y軸、X軸を設定する;3)1)を加味しながら、Z軸方向に未分化情報、Y軸方向に未分化―分化移行情報、X軸方向に特定細胞分化情報をプロットし、球形のいびつの程度で細胞株の特徴を実感できるようにする。以上の研究を通じて3Dの細胞株プロファイリングライブラリーの構築と多能性幹細胞を抽出する三次元的構造化手法を一般化する。
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