研究課題/領域番号 |
24240082
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
橋爪 誠 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90198664)
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研究分担者 |
森 健策 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (10293664)
高西 淳夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50179462)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低侵襲治療システム / 半自律型駆動機構 / 微細マニピュレーション機能 / CAD/ナビゲーション連携機能 / トレーニング/評価システムの構築 |
研究概要 |
本研究では、自律移動が可能な小型の大腸内視鏡の開発に取り組んでいる。平成24年度は、大腸内視鏡のための移動機構について検討した。大腸内視鏡検査において最も危険な合併症は穿孔である。そこで、移動機構の検討に際しては、穿孔リスクを最小化することを最優先事項とした。このような方針にもとづいてまず、動力源の選定を行った。選定に際しては、電気アクチュエータ、空気圧・水圧アクチュエータ、伝達機構を介した体外のアクチュエータからの動力伝達の3種類が候補にあがった。そして穿孔リスクを低減するには駆動機構自体に柔軟性を持たせることが有効との考えにもとづき、空気圧・水圧アクチュエータを採用した。次に、空気圧・水圧を動力に変換する手法について検討を行った。ここでは、イソギンチャクなどの海洋生物に見られる水力学的骨格に注目し、柔軟性を持つ素材で構成された軟骨格に空気または液体を注入することで、軟骨格の剛性と形状を変化させ、動力として取り出す手法を用いることとした。このような考えにもとづき、空気圧で軟骨格を動作させて動力をとりだす機構を試作した。試作した機構を用いて実験を行ったところ、この機構によって発生される動力を特定の方向への推力として利用する場合、いくつかの問題が発生することが明らかとなった。軟骨格は、圧力が低い状態において空気の注入量に対する形状の変化に再現性がないため、推力を発生させる方向が定まらない。そこで、圧力が低い状態において形状が変化する方向を拘束するための力学的機構が必要であることが判明した。このような考えにもとづき、圧力が低い状態において形状の変形を拘束する機構を試作し、軟骨格に統合したところ、軟骨格の変形を特定の方向への推力としてとりだすことに成功した。平成25年度以降、この機構の内視鏡への実装に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Computer assisted diagnosis(CAD)およびコンピュータナビゲーションシステムを搭載した内視鏡手術システムの開発を可能にするため、本年度は1)能動内視鏡マニピュレータ、2)大腸検査支援マニピュレータの開発を行い、以下の結果を得た。 1)能動内視鏡マニピュレータの開発:単孔式内視鏡下手術における術中の視点・視野の操作を目的に、汎用保持マニピュレータと外套管マニピュレータからなる能動内視鏡マニピュレータの開発を行った。外套管には圧縮コイルばねを用いて屈曲の2自由度を実現し、体内で自由に位置・姿勢が操作可 能な計6自由度の構成とした。ジョイスティックによる動作検証により、位置移動、屈曲動作が可能であることが確認された。また、内視鏡は小型化されたステレオ視をもつもので、対象物を3次元立体画像復元が可能なものを新たに開発した。今後は術具マニピュレータとの統合によるin vivo 実験を行い、システム全体の評価および改善を図っていく予定である。 2)大腸内視鏡検査における腸管短縮手技を支援するマニピュレータの開発:このマニピュレータは、4個のDCモータとそれによって駆動される4自由度リンク機構からなり、内視鏡先端に取り付けて使用する。駆動部は体外に設置され、ワイヤとアウターチューブを介して、マニピュレータを動作させる。マニピュレータの動作は、画像処理と強化学習を統合した制御系によって、自律的に最適化される。大腸内視鏡検査トレーニング用の大腸モデルにこのマニピュレータを挿入してその有用性を検証することができ、臨床応用の可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究実績のとおり、軟骨格の変形を特定の方向への推力としてとりだすことに成功した。平成25年度以降、この機構の内視鏡への実装に取り組む。 また、術具マニピュレータとの統合によるin vivo 実験を行い、システム全体の評価および改善を図っていく予定である。
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