研究課題/領域番号 |
24240089
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
能勢 博 信州大学, 医学系研究科, 教授 (40128715)
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研究分担者 |
樋口 京一 信州大学, 医学系研究科, 教授 (20173156)
上條 義一郎 信州大学, 医学系研究科, 講師 (40372510)
谷口 俊一郎 信州大学, 医学系研究科, 教授 (60117166)
岡崎 和伸 大阪市立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70447754)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スポーツ生理学 / 運動生理学 / 体温調節能 / 血液量 / インシュリン |
研究概要 |
中高年の熱中症が深刻な社会問題になっているが、我々は「体温調節能向上のためには血漿量の増加が必須であること」、「そのためには運動と糖質・蛋白質摂取が有効であること」、「インシュリンがこれらの反応に深く関与すること」を明らかにした。すなわち、中高年者の体温調節能劣化はインシュリンの機能劣化に起因することが示唆された。そこで「中高年者に対する運動によるインシュリン分泌能・感受性向上が、体温調節能を向上させる」という仮説を検証し、そのメカニズムを遺伝子から固体まで統合的に解析し、それに基づき熱中症予防の方策を提案することを、本研究の目的とする。 1)運動と糖質・蛋白質摂取の併用が体力と炎症性遺伝子に及ぼす効果: 平成24年度に、中高年女性45名を対照群、低・糖質蛋白質摂取群、高・蛋白質摂取群の3群に、それぞれ15人ずつわけ、5ヶ月間のインターバル速歩トレーニングを実施し、その前後で筋力、持久力、血漿量、血漿蛋白質量、対等能、腎のNa+再吸収能、体温調節能を測定した。平成25年度に白血球の炎症促進遺伝子のメチル化を測定した結果、一部の遺伝子で対照群に比べ糖質蛋白質摂取群では、摂取量依存性にメチル化がおきていることが明らかとなった。 2)運動と糖質・蛋白質の血漿量増加が血圧調節に及ぼす効果: 血漿量増加は、体温調節能の改善には有利に働くが、血圧調節には不利には働くのではないか、という高血圧症の治療を専門としている研究者から批判があったので実施した。平成25年度に、中高年男性20名を糖質摂取群、糖質・蛋白質摂取群の2群に10名ずつにわけ、2ヶ月間の自転車運動を実施し、その前後で筋力、血漿蛋白質量、運動時の血圧調節能、体温調節能を測定した。その結果、まず、糖質・蛋白質摂取群では糖質摂取群に比べ、筋力、血漿量、血漿蛋白質量、体温調節能が増加したが、安静時、運動時血圧は増加せず、むしろ低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢による筋力低下が、炎症性遺伝子を活性化し、糖尿病、高血圧症などの疾患を引き起こすが、運動と糖質・蛋白質摂取の併用が筋力向上、炎症性遺伝子の不活性化、体温調節能の向上に効果があるという仮説に基づいて実験を行った。その結果、運動と糖質・乳蛋白質摂取の併用が、筋力向上、炎症促進遺伝子の不活性化がおきることを明らかにしたことから、研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)運動と糖質・蛋白質摂取の併用が体力と炎症性遺伝子に及ぼす効果:平成24年、25年の結果に基づき、対照群と高・糖質蛋白質群、それぞれ12名でメチル化のゲノムワイド解析を行い、炎症関連遺伝子のほか、インシュリン分泌能・感受性に関連する遺伝子のメチル化を調べる。 2)運動と糖質・蛋白質の血漿量増加が血圧調節に及ぼす効果:平成25年度に明らかにした「血漿量増加にもかかわらず高血圧症に陥らない」原因を、動脈コンプライアンス、血圧反射から解明する。 3)安静時の糖質・蛋白質摂取効果の検討:血漿量の上昇に運動が必須か、を明らかにする。中高年者28名を糖質摂取群、糖質・蛋白質摂取群にわけ、1ヶ月間、糖質または糖質・蛋白質を摂取させ、その前後で、筋力、持久力、血漿量、血漿蛋白質量、運動時の血圧調節能を測定する。さらに、炎症関連遺伝子のメチル化についても測定する。次に、同様の実験を運動時でも実施する。 以上から、運動トレーニングと糖質・蛋白質摂取の併用が、筋力強化、炎症反応抑制を介してインシュリン感受性を改善し、血液量増加、体温調節能改善をもたらし、血圧を上昇させることなく、中高年の熱中症を予防するという仮説を立証する。
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