研究課題/領域番号 |
24240093
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60106010)
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研究分担者 |
松岡 広路 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10283847)
増本 康平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20402985)
城 仁士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40145214)
岡田 修一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70152303)
近藤 徳彦 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70215458)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者生活 / アクティブ・エイジング / 防災 / ボランティア活動 / 地域参加 / 生涯学習 |
研究概要 |
神戸市灘区鶴甲地区の20歳以上の成人を対象としたアンケート調査を実施し、当該地域住民の日常生活の現状と、アクティブ・エイジングの必要要因/阻害要因について探った。結果として、健康に対する関心が非常に高く、ゆえに、健康を維持するための何らかの取り組みを行っている人が非常に多いということが明らかになった。また、知的水準も比較的高く、学術的関心も高いゆえに、知的好奇心を充足する手立てが地域内にほしいということや、大学で行われる講演会等に参加したいという声も多く集まった。一方で、地域における防災対策に不安を感じているという人も多いということも明らかになった。 この結果を基にして、大学が主催となり、タウンミーティングを3回開催した。テーマは、「衣・食・住について考える」、「防災とメンタルケアを考える」、「地域における人と人とのつながりを考える」である。開催にあたっては、神戸市灘区の後援を得、それぞれのテーマを専門とした本学の教員による話題提供とともに、神戸市消防局や神戸市灘区社会福祉協議会の方々からより現場に即した内容の話題提供があった。 アンケート調査の中で住民から寄せられた大学の要望についても、タウンミーティングで回答する機会を設けた。その結果、食堂や喫茶コーナーを利用する住民が増えた。また、住民からの要望が多かった災害緊急避難所としての指定を得るための後押しとなり、正式に神戸市と提携を結ぶ運びとなった。 タウンミーティングの開催中に、当研究課題のプロジェクトのロゴマークを一般に公募し、地域住民の投票によって選定した。また、プロジェクト遂行を手伝ってもらう広報ボランティアを地域住民に募り、プロジェクトのイベントの広報を手伝ってもらったり、地域の現状について話を聞くという機会を設けたりもした。 本年度で実施したアンケート調査の結果と、タウンミーティングの報告書を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域在住の一般成人を対象して大量観察調査が実施できた。この調査の実施過程において、当該地域の連合自治会をはじめ、神戸市灘区のまちづくり課および健康福祉課の協力を得、それぞれの立場から調べたい内容の調査項目を作成し、官・学・民共同の大規模調査ができた。ここから得られた結果によって当該地域住民の生活課題とアクティブ・エイジングの現状、地域における多世代共生についての意識を明らかにすることができ、タウンミーティングを開催することができた。 タウンミーティングを通して地域住民から直接話を聞くことができ、当該地域が抱える地域課題やアクティブ・エイジングの現状と阻害要因をさらに詳細に明らかにすることができた。また、大学が住民に対してできることを確認することができ、実際にそのうちのいくつかが実現できたことは非常に大きな成果であったといえる。大学の持っている人的・学術的資源だけに頼らず、一般公募と住民の投票によってロゴマークが決定したことも、学・民共同で成し遂げた大きな成果であるといえる。 タウンミーティングの開催報告の広報物を作成し、地域内全戸に配布したとともに、本学のホームページ上で開催報告を行った。そのことによって、当該地域住民だけでなく、本研究の取り組みに関心を持っている人たちから問い合わせをもらうこともあり、本研究の取り組みが少しずつ周知されつつある。 タウンミーティングを通して、当該地域の住民とのつながりができてきたことはもちろんであるが、当研究プロジェクトに関心を持っていただいた行政機関や地縁組織との新しいつながりが構築できたうえに、既存の関係諸機関との連携も深まってきたので、今後の研究の展開にとって重要な基礎固めをすることができたことは非常に大きな成果であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート調査の結果とタウンミーティングを通して、明らかになった当該地域の問題は、「世代間交流が少ない」、「地域の防災対策に不安を感じている」、「地域内に学習や教養、娯楽の機会を求めている」ということであった。住民と大学が一緒になってこれらの課題を解決する方法を探るため、今後は、アカデミックサロンを展開する。 アカデミックサロンの主な目的は、地域の方が一歩でも外に出る機会を作るということ、知的好奇心を充足する機会を作るということ、お互いに顔見知りの人を人を増やしたり、普段から声をかけあったり、地域のイベントの参加に誘い合ったりするなど、地域住民の地域におけるネットワークの拡大・強化すること、そして、当該地域の課題を住民同士で解決する方法を探り、解決に向けて実際に行動する実行力を身に着けるというものである。アカデミックサロンの内容は、本研究科の特性を活かし、「健康」、「安心・安全」、「社会参加」というアクティブ・エイジングの概念を様々な領域によって解説、実践をするプログラムで構成する。また、「地域における多世代共生」を実現できるように本学の学生はもちろん、地元小学校などにも積極的に働きかけていくことにする。また、関係諸機関との連携を図りながら、当該地域に密接な特徴のある内容になるようにするよう留意する。 同時に、当研究プロジェクトの広報ボランティアサポーターの方々を中心に、地域における生涯学習のリーダー(ファシリテーター)を養成していく。広報ボランティアサポーターの方々は地域に対する関心が高く、この地域のために何かをしたいという願望が強いため、ファシリテーターとして十分に活躍できる人たちばかりである。ファシリテーターと協力してアカデミックサロンの運営を行ったり、地域で眠っている人材の発掘、その人たちが講師となってアカデミックサロンを開催することも検討している。
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