研究課題/領域番号 |
24240098
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
松田 覚 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (50242110)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エピジェネティック解析 / 細胞内シグナル伝達 / DNA修復遺伝子 / 遺伝子発現 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
紫外線や放射線あるいは発がん物質などによるDNA損傷は通常にも起こり、それは次に遺伝子変化や染色体異常の引き金になるため、エピジェネティックな変異がDNA修復分子群に変化が起こるとゲノムの正確性維持が損なわれる。これらの変化の蓄積は老化や発がんと関係している。紫外線や活性酸素刺激によって、特にDNA修復系分子のmRNAがどのように変化するのかを、培養細胞系において検討した。また、DNAメチル化も遺伝子発現制御やDNA修復系において重要な役割を果たすため、この解析も進めた。それらの結果、特定のRNAがどのようなメカニズムでDNA修復系を調整しているのか、あるいは、間接的に別のDNA修復分子発現に影響を及ぼしているのかがより明確になった。種々の食成分刺激によってRNA産生に影響するのかを、培養細胞系において、リアルタイムPCRを用いて検討し、誘導されるRNAを解析してDNA修復機構との関わりをさらに明らかにした。ATMやRad51の遺伝子発現が食成分刺激によって変化しうることを示した。ATMやRad51はDNA修復に関与するほか、発がんや転移などにも関係しているが、このATMのリン酸化や蛋白質発現が脂溶性ビタミンやイソフラボンなど食成分刺激によって変化しうることが明らかになった。食物に含まれるポリフェノールからもアプローチしながら、WRN・BRCA1・p53などの遺伝子発現においても同様に解析を進め、ATM・WRN・BRCA1・p53などの遺伝子発現がどのように変化するのかを、培養細胞系およびラットもしくはマウス組織においてマイクロアレイを用いて検討した。ハーブなどの食物成分が遺伝子のエピジェネティックな変化を介して癌やアレルギーなど各種疾患の病態改善に寄与できる例を柿渋のポリフェノールやブレファリズミンなどを用いて示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果として今年度内に査読付き英語論文を既に5報学術雑誌に発表し、研究計画を基本として発展的な実験もおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
生活習慣病関連タンパク質と関わっているアダプター蛋白質のNESCAやNESHなどについてのエピジェネティック解析を進める。また、TobやCaveolin分子などとの機能的な関わりも追求する。すなわち、免疫沈降や蛍光細胞染色によって局在を確認すると共に上皮成長因子と血小板由来成長因子による細胞刺激に誘発されるコレステロールの動態変化を確認し、細胞内カルシュウム濃度の上昇後インスリン分泌が上昇する際に、カベオラ構造やカベオリン局在にどの様な変化を生じさせるのかについても調べる。同様にして、これらの細胞内情報伝達におけるNESCAやNESHの関与についてRNAiを用いて明らかにしていく。ここまでの研究結果をin vivo で効率良く作用させる目的で、マウスやラットなどの疾患動物と正常動物とを比較検討する。さらに、内分泌系の異常などによる生活習慣病モデル疾患動物を用いて同様の解析を加えつつ、がんを含めた生活習慣病に関係する遺伝子発現を調節する食餌がモデル疾患動物の病態改善に有効性があることを検証する。
|