研究課題/領域番号 |
24240109
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
能城 修一 独立行政法人森林総合研究所, 木材特性研究領域, チーム長 (30343792)
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研究分担者 |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 特招研究員 (10272527)
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 研究部考古研究系, 准教授 (30456636)
鈴木 三男 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80111483)
南木 睦彦 流通科学大学, 商学部, 教授 (80209824)
佐々木 由香 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (70642057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物資源 / 縄文時代 / 外来植物 / 産地同定 / 資源管理 |
研究概要 |
縄文時代前期に成立した森林資源を利用する体系が,縄文的な森林環境の成立した草創期から早期の時期にどのように形成されたのかを解明し,また前期以降に確立した森林資源利用体系の地域による相違を解明することを目的として研究を行った。 縄文時代の東日本ではクリを中心とした森林資源利用が行われていたことが明らかとなっているが,西日本では,貯蔵穴から出土する果実からイチイガシの利用が想定されていた。これまでイチイガシは,九州以外では縄文時代における生育状況が不明であったが,兵庫県神戸市垂水区の垂水・日向遺跡から出土した木材化石と大型植物化石を解析することによって,イチイガシが,7300年前に終わる縄文時代早期以降,5600年前~2400年前の中期~晩期までの間に,大阪湾岸において,照葉樹林の主要な要素であったことを明らかにした。大阪湾岸にこの時期に成立した照葉樹林は,構成種の優占度では,現在の宮崎県の照葉樹林とは異なっていたが,種組成としては共通性が高く,その他に撹乱の大きい開けた立地に生育する種を含んでいた。瀬戸内海周辺で出土している大型植物化石を合わせて考えると,イチイガシを伴った照葉樹林は縄文時代前期頃には沿岸部に広がったと考えられる。 一方,東日本におけるクリの森林資源利用が西日本ではどこまで広がっているのかを確認するために福井県三方上中郡の鳥浜貝塚の堆積物の花粉組成を調べた。ここでは,14000年前~12000年前の草創期にはコナラ属コナラ亜属が優占して人による森林の利用はあまり明確でないものの,11000年前~9800年前の早期の段階でクリの花粉が10%に達し,貝塚の周辺でクリの利用と管理が始まって,6000年前の前期後葉にはクリの花粉が20%以上となってクリの資源管理が成立し,東日本と同様の森林資源管理が行われていたことを明らかにした。またウルシやアサも早期にクリの資源管理に伴って栽培されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初に計画していた遺跡の資料調査に加えて,垂水・日向遺跡の資料の調査を行い,西日本におけるイチイガシ資源の成立の様相を解明することができた。その結果,大阪湾岸では早期以降の中期までの段階で,イチイガシを含む照葉樹林が成立し,森林資源管理と利用の基礎が確立されたことを確認できた。 一方,鳥浜貝塚では継続して資料の解析を行った結果,東日本を特徴づけるクリ資源の栽培管理が早期段階から行われていた可能性を確認することができた。また中国原産と考えられるウルシやアサも,クリの資源管理に伴っており,東日本で前期に確認されている森林資源管理がより古い時期に確立していたことが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
早期から前期の連続した資料の解析が可能な関東地方の遺跡を対象として研究を継続し,鳥浜貝塚の資料と対比しながら森林資源の栽培管理の体系が確立する過程を明らかにする。
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