研究課題/領域番号 |
24240111
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
金田 明大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究員 (20290934)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2017-03-31
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キーワード | マルチチャンネル機器 / 地中レーダー / 電磁探査 / 磁気探査 / 電気探査 / 遺跡 / 分布調査 / 文化遺産保護 |
研究実績の概要 |
本年度は既存のアレイ式探査機器およびマルチスペクトル機器の現地テストと改良および新規導入した電磁・電気探査機器の遺跡探査に対する応用と改良を進めた。 平城宮跡等でアレイ式地中レーダー機器および磁気探査機の計測試験と機器の改良をおこなった。地中レーダー機器は遺跡の規模や地表の状況に応じてチャンネル数を8chと16chに柔軟に変更でき、人力や機械による牽引に対応可能な走査方法の検討と器具を製作し、条件を変更しながら試験的な計測をおこない、成果の検討と改良を進めた。多プローブの磁気探査機器の同時測定試験では安定した姿勢での計測冶具の開発の必要性と隣接プローブ間のキャリブレーションや温度ドリフト補正といった課題が浮かび上がった。 小型UAVによる安価な空中写真計測システムを実用化した。SfM/MVS技術を用いて高精度遺構計測が可能となった。マルチスペクトルカメラによる植生撮影試験を行い、NDVI等の指標による新たな写真判読手法の研究を開始した。 3種の深度に対して導電率と磁化率を同時計測可能な多チャンネル式電磁探査機を導入し、宮殿、窯跡、古墳、城壁において試験した。探査可能深度の設定の自由度が制限されるものの、全3者では従来の比抵抗探査等とほぼ同等の成果が1/30程度の時間で得られた。需要が大きく見込める城壁や斜面での空洞等の探査についても専用の計測冶具を設計し、試験をおこなった。この結果、安定して情報を得ることができた。また、廉価な電気探査機器を導入し、迅速な探査方法と他手法との比較試験を開始した。 関連する探査は平城宮・東大寺西塔および戒壇院・薬師寺東塔(奈良市)、大萱古窯跡群(岐阜県)、金沢城(石川県)、甲立古墳(広島県)、実相寺古墳群(大分県)等で現地作業と解析を進め、成果の蓄積と機器や探査方法の改良をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度中途での採択や導入の契約、そして関連法規への対応による一部機器の導入の遅れから、本格的な試験の導入がやや遅れている。反面、当初予定した以上に探査機器の遺跡に即した探査方法や補助器具の開発などを進めることができ、これらについては一定の成果を出しつつある。ただ、これらについても条件が良好な遺跡において達成できたものであり、更に多様かつ厳しい条件での試験などを通じて日本をはじめとする温帯モンスーン地帯の遺跡において実際に活用が可能な探査機器の開発と方法の確立が今後必要となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは、地中レーダー機器・磁気探査機については作業行程および解析手法の習熟、遺跡に特化した利用方法の確立、そりやマーカーなど作業を補助する器具の改良をおこない、平城宮跡はじめ多様な遺跡での計測試験をおこない、手法の特性の把握と作業マニュアル化を進める。これらについてはメーカーや関連研究者とのネットワークにより達成したい。 UAVを利用したマルチスペクトル画像による遺跡判読の改良については、熱赤外線画像など他の手法も含めて検討をおこなう。 電磁探査機は初期の検討では十分なデータの取得が可能であることが明らかになった。今後は石垣や斜面内の空洞や脆弱部の調査、地中の比抵抗構造の迅速な把握のための調査手法の開発に研究を進めたい。 当初よりやや遅れて研究を進めているが、基礎的な検討においては成果をあげつつある。今後は、実際の遺跡において個別の状況に適切に対応した探査を迅速かつ効果的に実行する手法を考える必要がある。
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