研究課題
本研究の具体的な検討内容は、(1)津波被災分布の検証、(2)液状化分布の検証、(3)ハザードマップの検証、(4)リアリティのあるハザードマップの開発の4項目に分けられる。これらに加え、東京地学協会「地学雑誌」に特集号「東日本大震災の地理学的検証-津波・地盤災害の多様性と地域性-」を提案し、メンバーで投稿・編集作業を開始した。(1)では、津波遡上高分布図の作成を引き続き進めた。震災直後に撮影・公表された既存のオルソ写真に歪みがあり、遡上高計測にも大きな誤差が生じる点についてヘルマート変換を施して解決したほか、急傾斜地における遡上高の計測等についても検討を行い、津波遡上高分布図(岩手県~福島県北部)を完成した。青森県中南部および福島県北部~千葉県北部についても、津波遡上ラインの認定位置精度に配慮しながら同様の作業を実施し、青森県中南部から千葉県北部にかけての広範囲をカバーする縮尺1:25,000津波遡上高分布図を得た。津波遡上高分布図には浸水深(海岸工学グループによる)も掲載しており津波挙動の解析が可能である。電柱を指標とした津波挙動分析も実施した。(2)では、我孫子市に関する検討をさらにすすめた。(3)および(4)では、切り土・盛り土境界の認定のための写真測量学的な検討を行った。その結果、使用する航空写真のスペックによる認定位置や計測の精度が明らかになり、縮尺に加えて基線高度比が重要であることがわかった。また、現状の各種ハザードマップの特徴と問題点を整理し解決策を提示すべく、書籍出版を構想、執筆作業を分担で開始した。その他、構築したデータサーバについて各種地理情報を拡充した。津波遡上高分布図に関しては防災科学技術研究所「eコミマップ」を通じて一般公開し、また「災害地理・地震ハザード情報ポータル」をあらたに立ち上げた。
1: 当初の計画以上に進展している
25年度は、震災後3年間の検討作業を経て、高精度な津波遡上高分布図(岩手県~福島県北部)を最終的に完成させた。さらに青森県中南部や、福島県北部~千葉県北部についても、検討作業を継続し、次年度において続編として当地域の津波遡上高分布図を刊行するための作業を行い、最終的に津波被災地域全体(青森県中南部~千葉県北部)を網羅する縮尺1:25,000津波遡上高分布図を得る目途を立てた。さらに、人的被害との関係の検討、電柱を指標とした津波挙動分析、我孫子市における液状化に関する現地調査を継続し、堆積構造を考慮した液状化数値解析、切り土・盛り土境界の認定のための写真測量学的な検討等、多面的な解析を行った。こうした成果は当初予定した計画内容を2年度目にしてほぼ達成している。また、その成果を次項にも述べるように当初計画の範囲を超える形で、成果公表できるところまで到達し、さらに東日本大震災の教訓を活かした防災・減災の国際展開についてもその可能性を確認することができたことは重要である。
26年度は、①津波遡上高分布図などをインターネット公開して、震災を検証する様々な目的に利用に供するため情報発信すること、②東日本大震災の地理学的な学術研究成果を「地学雑誌特集号にとりまとめること、および③ハザードマップの問題点や解決すべき課題に注目した書籍にまとめること、④災害に対するレジリエンスの重要性という観点からの書籍も刊行すること、⑤モンゴルや台湾を例にレジリエンス研究の国際展開を図ることの5点を目標とする。③~⑤については本科研の当初計画内容を超える重要な展開である。
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