研究課題
本課題では、栄養シグナルによる細胞分化制御という観点から、正常造血幹細胞と白血病を比較することにより、がんの成り立ちや悪性進展メカニズムを理解することを目標に研究を進めた。本年度は、mTOR複合体1 (mTORC1)としてRhebの機能解析を行った。成体Rheb変異マウス(Rheb f/f CreER)にタモキシフェンを投与したところ、Raptor変異マウスで観察されたような短期間で死亡する個体はみられず、Rhebは、個体レベルでの生存に必須ではないことが判明した。血液細胞の解析では、骨髄細胞系細胞の増加や好中球の最終分化異常など、一部Raptor欠損と同様の表現型を示したが、Raptorで認められるような汎血球減少のような表現型は認められなかった。むしろ、末梢血中白血球数の増加や、脾臓における造血幹細胞を含む未分化分画の顕著な増加などを認めた。血球細胞におけるmTORC1の活性を、リン酸化4EBP1にて評価したところ、Raptor欠損が非常に低値を示すのに対して、Rhebは、部分的な抑制を示していた。このことから、定常状態における造血幹細胞維持には、Tsc-Rheb経路に依存しない経路によるmTORC1活性調節が重要であることが判明した。Rhebを介したmTORC1の活性化は、発がんのような異常造血において顕著であると推察されることから、Rhebの役割は、正常と白血病幹細胞において大きく異なることが推察された。以上の結果は、がん動態と細胞分化の接点を理解する上で貴重な知見となった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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