研究課題
西部北太平洋海域は,世界でも有数の漁場であり,活発な生物ポンプ作用による二酸化炭素吸収海域でもある.本研究では,西部北太平洋の亜寒帯及び亜熱帯海域に設置された時系列観測点において,微生物群集代謝機能の網羅的解析を行い,この海域の物質循環と生態系を理解するための最も基本的かつ重要な情報を得ることを目的とした.2010~2011年4回の「みらい」航海にて表層海水を採取,DNAを抽出し454パイロシーケンス法によって塩基配列を決定した.全8試料(4航海x2観測点)で約480万リードの配列情報を得て遺伝子予測とKEGG オーソログ解析を行った.特に今年度は,KEGGモジュールを用いた自動解析システムMetabolic And Physiological potentiaL Evaluator (MAPLE)公開版の開発と高度化を行った.KEGGモジュールで定義された各種の遺伝子セットの充足率に加えて,同定の信頼性の指標化や遺伝子出現頻度の標準化手法について検討し,より信頼性の高い手法を確立することができた.昨年度までの解析により,糖や脂質代謝といった基本的なモジュールは季節や海域による大きな充足率の変動は見られないが,膜輸送系や二成分制御系のような環境応答に関わるモジュールについては大きな変動が見られることがわかってきた.今年度はさらに,高度化されたMAPLEシステムによる解析でいくつかの特徴的なモジュールの変動と構成する微生物分類群が明らかとなり,KEGGモジュール充足率を指標とした時系列解析が,生態学的に重要な機能を推定し微生物群集構造と生態系機能との関係を理解するための強力なツールとなることが示された.
2: おおむね順調に進展している
16SrRNA遺伝子のアンプリコン解析により深海の付着細菌や古細菌について予期しなかった発見があった。さらに、メタゲノム解析におけるオリジナルの自動情報処理システム(MAPLEシステム)がほぼ完成したことから、新たな発見が期待できると共に、最終年度に向けた統合的な解析を進めることができる。
本年度にほぼ完成したMAPLEシステムを最大限に活用し,メタゲノムサンプルの解析を進める.独自技術である本システムを利用することにより,他ではできない微生物群集の代謝機能解析が可能となると期待される.西部北太平洋における微生物群集の変動が,どのような微生物機能の変動に反映されているのか,鍵となる代謝系や遺伝子セットを明らかにする.また,環境データと併せた多変量解析や、16SrRNA遺伝子のアンプリコン解析によって得られた群集構造データを含めた統合的な解析を進める.
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Western Pacific Air-Sea Interaction Study (Eds. M. Uematsu, Y. Yokouchi, Y. W. Watanabe, S. Takeda, and Y. Yamanaka)
巻: 0 ページ: 203-209
10.5047/w-pass.a03.004
http://www.genome.jp/tools/maple/help.html