研究課題
基盤研究(A)
フィルンの微細構造発達の調査として、結晶主軸方位分布・氷と空隙の幾何学形状・粒径・密度の計測を当初の目的とした.初年次である平成24年度に結晶主軸方位分布を主として計測することとしていた.しかし、製造会社による開発の予期せぬ遅れが発生し、結晶主軸方位分布の計測は2年次に持ち越し、最終的には、平成26年3月に調達した.それでも、既存の各種の計測手法を用いることによって、南極氷床内陸積雪の気候シグナル形成の物理過程にかかる実質の計測をすすめた.これまでに極域で採取した試料やデータの資源を活用し、計測手法群を駆使して約100m深のフィルンコアや氷床表面雪氷試料の物理的特徴を抽出し、データ解析と考察を実施し、計測にフィードバックをかける作業を繰り返している.研究代表者が主導しているが、内外のアイスコアの研究者と密接な連携が前提とし、研究情報の交換をしながら研究を推進している.主として使用した既存の計測機器やノウハウとしては、① 開放型マイクロ波共振器を用いた誘電率テンソルの計測、② ガンマ線透過法を利用した高空間分解能密度計測、③ 近赤外光学反射ラインスキャン計測、④ 複素誘電率連続計測である.フィルンの3次元幾何構造の研究には、X線吸収μトモグラフィの活用が重要な情報をもたらすが、本研究では、結晶主軸方位計測装置の開発の遅れから、X線吸収μトモグラフィの計測も延期した.平成24年度の研究代表者のアクションを以下に要約する.(1)南極氷床で採取した雪氷試料に対し、各種計測手法を用いた計測.データを揃える作業をすすめた.(2)連携研究者も含めデータ検討を実施し、それ以降の計測プランへのフィードバック(3)国内外の学会で研究経過を関連研究者に示し議論.関連した6編の論文を出版したほか、国内および国際学会・研究会で計8件の発表をおこなった.
2: おおむね順調に進展している
製造会社による開発の予期せぬ遅れが発生し、結晶主軸方位分布の調達は2年次に持ち越した.この点に関しては1年遅れた.しかしながら、既存の研究試料と装置系を用いたデータ取得と蓄積、それに考察にかかる作業は着実に行い、研究成果の発表を続けている.フィルンの物理特性を用いて、南極氷床内陸積雪の気候シグナル形成の物理過程にかかる重要なデータを得つつある.この点で、全体としての進捗は、おおむね順調と自己評価する.
本計画がもつリスクとしては、装置系整備・運用にかかる何らかハードウェアの支障を想定してきた.大量の試料を、多種の手法で計測し、データ解析と考察から如何に課題を解決するかというタイプの研究であるため、装置系や計測の流れを最適化し、如何に効率的な研究を構築できるかという点がキーになっている.研究代表者は、開発洗練や運用には習熟しており、また、計測に用いる試料は既に取得済のものである.このため、これまでのところ装置の開発遅れに影響は小さい.今後、結晶主軸方位計測装置の開発を確実におこなうほか、 万一機器が故障した場合には、機器レンタル利用の方策をとる.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) 備考 (3件)
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