研究課題/領域番号 |
24241009
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
猪上 淳 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (00421884)
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研究分担者 |
榎本 剛 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10358765)
中野渡 拓也 国立極地研究所, 北極観測センター, 特任研究員 (20400012)
大島 和裕 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (40400006)
高谷 康太郎 京都産業大学, 理学部, 准教授 (60392966)
堀 正岳 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (60432225)
飯島 慈裕 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (80392934)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 北極海 / 海氷 / 予測 / 中高緯度 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
(1)北極航海の実施:8月31日から10月10日まで海洋地球研究船「みらい」による北極航海を実施した(課題代表者が首席研究者)。大気・海洋の定点観測を北緯74.75度、西経162度にて約3週間実施し、特に高層気象観測データを高頻度(3時間毎)に取得することに成功した。また昨年度の航海データに関して、秋の強風イベントが海洋の熱や物質循環に対して大きな影響があることを発表した(Kawaguchi et al. 2015 J. Phys. Oceanogr.; Nishino et al. 2015 JGR)。 (2)国際連携:「みらい」北極航海期間中に昨年同様ニーオルスン、アラート、ユーリカで強化観測が実施された。またドイツとスウェーデンの砕氷船からも高層気象観測が行われた。 (3)データ同化研究:2012年8月の猛烈に発達した北極低気圧の事例に関する観測データの影響評価について、査読付き論文として発表した(Yamazaki et al. 2015 JGR)。また、2013年に実施したラジオゾンデの強化観測については、北極海航路上の高気圧に伴う強風イベントに着目し、観測データを同化すると風の予測精度が向上し、海氷分布予測にも好影響をもたらすことを示した(論文投稿中)。 (4)アウトリーチ:海氷面積と大陸寒波の関係について査読付き論文3件を発表し(Sato et al. 2014 ERL; Nakanowatari et al. 2014 J. Clim.; Mori et al. 2014 Nature Geosci.)、全ての論文に対しプレスリリースを実施し成果の社会還元を行った。特に中高緯度相互作用の成果として、メキシコ湾流の変動が北極温暖化・ユーラシア大陸寒冷化に影響を及ぼす知見(Sato et al. 2014 ERL)は、注目度が高く新聞やテレビ等で頻繁にとりあげられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・集中観測とデータ同化による予測可能性研究に関して、本研究課題による成果が国際コミュニティーから高く評価されつつある。その現れとして、世界気象機関/世界気象研究計画(WMO/WWRP)が推進している極域予測計画(PPP)の運営委員の一人として本研究課題代表者が任命された。また、国際北極科学委員会(IASC)の大気グループの日本メンバーとしても登録された。さらに、ドイツ砕氷船の観測データを用いた日独共同研究論文も発表し、国際共同研究の実働を担っている。 ・バレンツ海の海氷面積とユーラシア大陸の寒波の関係について、3本の査読付き論文を発表し、当該分野の日本の活動が国際的にも評価される様になってきた。プレスリリースを3度実施し、成果の社会還元にも積極的である。Nakanowatari et al. (2015 J. Clim.)はバレンツ海の海氷減少の因果関係が海洋・海氷・大気・陸域の季節スケールの多圏変動と関連させた研究であり、本研究課題のタイトルの「季節サイクルと多圏相互作用」の核心に迫る成果である。 ・海洋地球研究船「みらい」の北極航海の首席研究者として高緯度定点(北緯74.75度、西経162度)での高層気象観測に成功した。昨年度の実績から、ドイツ・カナダ・スウェーデンの協力を得ながら、北極圏での集中観測網の構築に貢献した。PPPではこの流れを2018-2019年に予定されている極予測年(YOPP)の先駆的研究として位置づけている。本研究課題の成果が国際的に評価され、さらなる知見の発信を期待されている。 ・以上の研究達成状況から、本研究課題は日本の北極研究の国際的ステータスを向上させるのに大きな貢献をしており、当初の計画以上の進展であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
・現在進行中のボーフォート高気圧研究、水循環研究、太平洋側北極海の変動研究について解析を進めるとともに、順次査読付き論文へ投稿する。
・本研究課題は国内外の北極研究情勢と密接に関わるため、引き続き研究成果の公表を国内外の各種学会で進めるとともに、情報収集も行う。具体的には2018-2019年の極予測年(YOPP: Year Of Polar Prediction)やMOSAiCプロジェクト(Multidisciplinary drifting Observatory for the Study of Arctic Climate)への日本の貢献や、文部科学省による北極域研究推進プロジェクト(ArCS)への参画等、次期研究課題の設定を意識した総括を行う。
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