研究課題/領域番号 |
24241013
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
福田 秀子(曽根秀子) 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (60280715)
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研究分担者 |
黒河 佳香 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (30205231)
TIN・TIN Win・Shwe 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 研究員 (00391128)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノマテリアル / 共焦点レーザー顕微鏡 / 細胞 / 組織 / 動態 / デンドリマー |
研究概要 |
PAMAMデンドリマーの液中での分散性の評価、体内分布及び細胞内動態に関する研究を中心に調べた。 分散性の評価では、水およびメタノール中でのPAMAMの分散性を、動的光散乱法を用いて調べた。直径4.4nm G4世代のPAMAM標品を純水で希釈した場合には、直ちに数10~数100 nmの凝集が起こったが、一晩静置の後に元分子の粒径サイズでの再分散が認められた。細胞培養液中では、PAMAMの強い凝集がみられたが、一晩静置でも元のサイズにはもどらず再分散が起こりにくいことがわかった。細胞内動態の評価においては、 蛍光物質で標識したPAMAMを培養細胞に曝露し、共焦点レーザースキャン蛍光顕微鏡でPAMAMの細胞内移行・分布を調べた。ヒト肺動脈内皮細胞では、細胞質内の核周辺に蓄積していることがわかった。ヒトES由来胚様体にでは、胚様体の外周囲にわずかな存在を認めた。ミトコンドリア及びリソソームの特異的染色剤で細胞内の局在を確認したところ、添加1日後にリソソームに一致したPAMAMの局在を認めた。さらに、光学的検出法による細胞・組織内PAMAMの同定は、共焦点レーザー顕微鏡による観察を検討中である。生体影響評価に関する研究では、PAMAMを雄マウスに点鼻投与し、24時間後の免疫および炎症反応性を標準的な血のパラメーターで調べた。その結果、対照群とPAMAM投与群の間に変化は見られなかった。海馬および大脳皮質中で神経栄養因子BDNF mRNAレベルの増加が認められた。PAMAMの単回点鼻投与後に嗅球と海馬の中で形態論および病理変化も病理組織学的法で調べたが、対照群と比べ、PAMAM投与群の脳では有意な変化が見られなかった。今後は生物分散に対するPAMAMの時間的経過影響、およびPAMAM影響の様々な投与ルートおよび多回投与の影響を調査する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画どおり、今年度はPAMAMデンドリマーの液中での分散性の評価、細胞内動態及び体内分布と影響に関する研究を実施した。分散性の評価では、水およびメタノール中でのPAMAMの分散性を、動的光散乱法、液中観察が可能なラマン分光法、暗視野観察による高解像度顕微鏡観察、走査型プローブ顕微鏡SPM観察、共焦点レーザー顕微鏡による観察を試みた。そのうち、走査型プローブ顕微鏡SPM観察及び共焦点レーザー顕微鏡観察が有効であった。しかしながら、これらの方法では、物質の同定ができないため、さらに顕微質量分析、FIB-TOF-SIMS、Field-Flow Fractionation法+蛍光検出での同定を検討した。細胞内動態の評価においては、 共焦点レーザースキャン蛍光顕微鏡を購入し、蛍光標識PAMAMの細胞内移行・分布解析中である。この手法を用いて、ヒト肺動脈内皮細胞、ヒトES由来胚様体における細胞内の局在を確認した。さらに、生体影響評価に関しても、蛍光標識、非蛍光標識PAMAMを雄マウスに点鼻投与し、24時間後の生化学的、病理組織学的検索及び遺伝子発現プロファイルの解析を実施した。以上の研究実施から、PAMAMは、脳へ移行し、単回投与で遺伝子発現のプロファイルが変化することが認められた。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の研究結果から、液中での拡散分布の時間的推移の変化を解析する。デンドリマー自体の物性(サイズ、比表面積、表面電荷、フラクタル次元、細孔性など)を変えたうえで計測をくりかえす。さらに、環境液中での凝集、拡散・沈降に関する実効濃度、時間経過での計測を実施する。樹状ナノ粒子の体内分布に関する研究では、体内分布の実測(鼻脳軸・血液内負荷)蛍光標識及び非蛍光標識のデンドリマーを成獣に単回で腹腔内もしくは血液内投与し、主要臓器(脳、肝臓、腎臓、生殖器など)ごとの分布を調べる。また、末梢血を用いて血中半減期を計測し、さらにメタボノミクス法により全身代謝への影響を調べる。模擬試験系における動態の計測では、血液-脳関門(BBB)の通過がおこるかどうかをinvitro BBBのモデル実験で確認する。神経を介した移動があるかどうかを軸索内移動を蛍光顕微鏡で観察する。樹状ナノ粒子の細胞レベルでの分布・反応に関する研究では、培養細胞への影響に関する研究:多能性細胞(ES細胞及びiPS細胞)の未分化時期にデンドリマーを培養液に添加し、細胞の変化の量反応関係及び経時変化を観察する。影響の指標には、細胞数、細胞形態、成熟細胞への分化度、DNA傷害性については、小核試験、アポトーシスを調べる。mRNA遺伝子発現変化及びエピゲノム変化については、PCR技術による96プレート様式のアレイ解析法を用いる。
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