研究課題/領域番号 |
24241014
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加茂 将史 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (90415662)
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研究分担者 |
内藤 航 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (10357593)
永井 孝志 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 主任研究員 (10391129)
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
中森 泰三 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 講師 (50443081)
保高 徹生 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (60610417)
大嶋 雄治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70176874)
小野 恭子 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (90356733)
林 岳彦 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (90534157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | DGT / BLM: biotic ligand model / metal / ecological risk / risk assesment / bioavailability |
研究概要 |
土壌生態リスク評価については、金属の利用可能量と土性との関係性を把握するためのDGT試験、土壌生物における金属毒性予測モデル(BLM)構築のための生物毒性試験を行った。土壌は代表的な土壌13種の採取を行い、粒度分布および塩基置換容量、炭素含有量、pH等の化学的性質の計測を行った。これら土壌にカドミウムを添加し(4濃度区)、DGT試験を行い金属の生物利用可能量の把握を行った。概して利用可能量は、塩基置換容量および炭素含有量とは負に相関し、砂分含有率とは正に相関することが明らかとなった。しかしながら、利用可能量とpHでは、添加濃度が低いと負に、高いと正に相関するといった濃度依存的な複雑な関係が示唆された。毒性試験は採取した4土壌およびOECD人工土壌において、ミミズおよびトビムシを用いて実施し、濃度反応関係や半数致死濃度(LC50)を推定した。LC50は土性により異なり、例えば利用可能量と相関が高い砂分含有量を多く含む砂質土では低いという期待通りの結果が得られる一方、ミミズとトビムシでは有害影響が起こりやすい土壌順位が異なる等、直感的には予想しづらい興味深い結果も得ている。 水生生物のリスク評価では、メダカではBLMパラメーターを推定するために必要な毒性試験は全て終了し、パラメーターの推定も終了した。試験結果とモデルの予測が全て2倍以内に入り、実験室の調整された水ではという限定条件はあるものの、非常に高い予測精度を持つモデルの構築が行えた。ミジンコを用いた試験では、幾つか再試験が必要ではあるが、パラメータを推定するのに必要なデータは収集を終えた。今後、野外水を用いた実証試験を予定している。そのための採水候補として人為負荷が最小限に抑えられている河川を選定し、予備調査を実施した。本プロジェクトの目的である低硬度におけるBLMの適応可能性の実証に適した河川を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の目標は、データを収集しそれらに統計処理を行うことで毒性予測モデルのパラメーターを推定することであった。DGT試験や毒性試験等、モデルを開発するための基礎的なデータの収集はほぼ終えている。加えて利用可能量把握のためのDGT試験では、より精緻なモデルを構築するために必要なデータを得るための追加試験のデザインも行うなど、想定以上に進捗している。毒性試験についても半数致死濃度の推定が終了する等、進捗は順調である。しかしながら、データを解析するための統計手法の開発に若干の遅れが見られている。これは、データが予想以上にノイジーであること、土壌の物理化学特性が互いに相関していること等により想定以上に複雑な統計モデリングが必要になったこと、が原因としてあげられる。定量的な議論へと至っていない点については若干の遅れが見られるものの、土壌生物のリスク評価という前例が少ない研究である点を考慮すれば、許容できる程度の遅れであると考えている。 水生生物では、メダカにおける銅の毒性予測モデルの構築を既に終えており、検証のための試験を開始するなど予定よりも早い進捗である。ミジンコおよび藻類では、データの収集はほぼ終えており実験の進捗に関しては予定通りであると言えるが、モデルパラメーターの推定は行っておらずデータ解析が予定よりも若干遅れている。しかしながら、モデルパラメータの推定はメダカで実施したものと同じであるため、進捗状況の迅速な回復は十分期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
土壌の金属リスク評価については、引き続き利用可能量と土性の関係を把握するためのDGT試験および、土性と影響農を把握するための毒性試験を実施する。DGT試験については、土壌分析の結果から、昨年度までに用いた土壌は物理化学特性に偏りがあり、統計処理を施すにはデータギャップが存在することが明らかとなっている。これらギャップを埋めるため、新たに土壌を採取し、追加的なDGT試験を行う。この追加試験により、統計モデル開発の負担を減らすことが可能で、かつ予測モデルの高精度化が期待できる。統計モデルの開発については、これまでに計測した互いに関連している物化特性から利用可能量を推定するのに責任のある特性を抽出する統計モデリングを行う。結果を用いて、利用可能量推定モデルの構築を行う。次いで、これら利用可能量から生物の毒性値を予測するモデルを構築し、土壌と利用可能量、利用可能量と毒性値とこれまで個別に開発されてきた二つの研究を一気通貫させるモデルの開発を行う。 水生生物については、藻類についてはこれまでの結果のまとめを中心に行う。ミジンコ、メダカに関しては、実証研究へと移行する。メダカについては、まずはモデルパラメーターを推定しモデル精度の検証を行った上、野外水を用いた毒性試験を実施する。メダカについても同様に、野外水を用いた試験を実施する。いずれも昨年度開発したモデルの予測値と毒性試験の結果を比較し、違いについて考察を行う。野外水は昨年度予備調査を行った河川を中心に必要な量を採水するが、必要に応じて新たな河川の選定を行う。予備調査、本採水のための調査旅行を行う。並行的に、採水した野外水にはDGT試験を実施し、利用可能量の把握を行う。状況に応じて、新たな金毒の毒性試験も開始する。
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