研究課題/領域番号 |
24241018
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤堂 剛 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90163948)
|
研究分担者 |
木下 政人 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60263125)
|
研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2015-03-31
|
キーワード | 損傷応答 / 放射線 / 化学発ガン / 遺伝子発現制御 / メダカ / 変異体作成 |
研究概要 |
損傷応答研究における今後の重要課題は、細胞レベルで明らかにされてきた損傷応答機構が、実際の個体内(体組織レベル)でどのように制御され、発がん等生体影響抑制につながっているのかを明らかにする事である。本申請ではメダカにおいてDNA損傷応答を体組織レベルで解析する系の樹立を目指す。既に樹立しているp53, ATM等損傷応答に関わる主要遺伝子のメダカ変異体,更に新たに作成する変異体を用い、Transgenic(TG)個体を作成し、赤外レーザによる遺伝子発現誘導あるいはトランスポゾンベクターにより体細胞モザイクを作成し、遺伝子機能解析を行うのが基本戦略である。遺伝的不安定性(突然変異生成)を損傷応答の指標として取り上げる。本年度以下の事を実施した。 1)変異体の利用:DNA-PKcs等二重鎖切断損傷修復に関与する遺伝子変異体の樹立を行った。 2)体細胞モザイクの作成:体細胞モザイク作成は,①piggyBacトランスポゾンベクターによる体細胞への高効率遺伝子導入法、②赤外レーザによる局所的遺伝子発現誘導系の2方法により行う。①piggyBacトランスポゾンベクターによる体細胞への高効率遺伝子導入法:トランスポゾンベクターを用いたBACクローン遺伝子導入法の確立を行った。②赤外レーザによる局所的遺伝子発現誘導系:本法では、メダカ体細胞においてCre/loxPによるゲノム編集をヒートショックで制御する系の樹立が必須である。本年度予算で赤外レーザ照射システムを導入した。透明メダカSTIIを用い系に樹立を行っている。 3)体細胞での遺伝的不安定性同定(突然変異検出):突然変異検出は次世代シークエンサーにより行う。次世代シークエンサーによる解析には、変異細胞をクローン化する必要がある。個体レベルの前段階としてクローン化された培養細胞を用い、次世代シークエンサーによる検出系の樹立を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の骨格は、1)変異体の利用、2)体細胞モザイクの作成、3)体細胞での遺伝的不安定性同定(突然変 異検出)の3点から成る。各々についての達成度を以下に記す。 1)変異体の利用:p53, ATM等損傷応答に関わる主要遺伝子のメダカ変異体は既に作製している。新たにDNA-PKcs変異体も樹立した。また、TALEN, CRISPR等新たな遺伝子変異体作製方法の樹立にも成功している(100%)。 2)体細胞モザイクの作成:piggyBacによる遺伝子導入法を確立している。体細胞モザイク作成に充分な頻度でゲノムDNAに外来遺伝子を導入する事が可能になっている(100%)。 3)体細胞での遺伝的不安定性同定:放射線により遺伝的不安定性が増加する事をマイクロサテライトマーカーにより見いだし、遺伝的不安定性解析の方向性を確定できた。ただ予定していたレーザdissectionによる組織サンプル取得法は現在試行中であリ、確立には至っていない(90%)。 以上の成果を総合して、(2)おおむね順調に進展している。と自己判定した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の骨格である、1)変異体の利用、2)体細胞モザイクの作成、3)体細胞での遺伝的不安定性同定(突然変 異検出)について、技術的問題点はほぼ確立できている。唯一残っているのは、「レーザdissectionによる組織サンプル取得」法の確立であリ、これを急ぎたい。 また、遺伝的不安定性については、生殖細胞での変異検出系は確立できたが、今後は同様の指標で体細胞変異の同定法の確立を行いたい。
|