研究課題/領域番号 |
24241019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菅澤 薫 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環バイオシグナル研究センター, 教授 (70202124)
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研究分担者 |
岩井 成憲 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10168544)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子 / ゲノム / 蛋白質 / DNA損傷修復 / 一分子解析 |
研究概要 |
1.ヌクレオチド除去修復促進因子の解析 6種類の精製組換えタンパク質因子(XPC、TFIIH、XPA、RPA、ERCC1-XPF、XPG)により再構成したヌクレオチド除去修復(NER)損傷切り出し反応を促進する活性を指標として、HeLa細胞抽出液から活性を担うタンパク質因子の精製を行った。最終的に得られた活性画分に含まれるタンパク質について質量分析を行ったところ、プロテインキナーゼが同定された。このプロテインキナーゼの組換えタンパク質を再構成NER反応系に添加したところ、反応の促進が確認できたことから、NERのコア反応がタンパク質リン酸化により制御されている可能性が新たに示唆された。ループ構造によるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の修復促進効果は再構成NER反応系で再現されつつあるが、細胞抽出液を用いた系に比べてその程度が依然低いため、さらなる未知因子の関与も含めて系の最適化を進めている。 2.一分子イメージングによる損傷認識機構の解析 紫外線照射したλファージDNAと、ビオチン化XPCタンパク質複合体に量子ドットを結合させたものを用いて、損傷に対するXPCの結合を一分子観察する系を構築した。紫外線により損傷を導入したDNAに対し、特異的に結合したXPC分子を実際に観察することに成功した。XPCが損傷部位に到達する前の過程を可視化するため、部位特異的に損傷を含む化学合成オリゴDNAをλファージベクターに組み込む一方、流路系を用いて蛍光標識したXPCを注入できる系の構築を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精製タンパク質により再構成した無細胞NER反応を促進する因子を生化学的に精製、同定できたことで大きな成果が得られた。この反応促進機構の解析は、生体内におけるNER反応の制御を理解する上で重要な知見を与える可能性がある。脱塩基部位の挿入によるCPDの修復促進、およびGAL4 DNA結合ドメイン-XPC融合タンパク質を用いたGAL4結合配列依存的なCPD修復のin vitro系については、DNA基質と組換えタンパク質の調製を行い、予備的な結果を得つつある。また蛍光標識XPCの一分子イメージングについては基本的な観察システムの構築が完了し、損傷認識過程の可視化のために細かい観察条件のチューニングの段階に入っている。このように、全体として研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヌクレオチド除去修復促進因子の解析 無細胞NER反応の促進因子としてプロテインキナーゼが同定されたことで、リン酸化の標的となるタンパク質因子の同定と修復反応促進機構の解析、および細胞内におけるリン酸化の動態解析を計画に追加する。さらに再構成NER反応の条件を至適化した上で、脱塩基部位などの内因性DNA損傷がCPDの修復をin vitroで促進するかどうか結論を出す。脱塩基部位によりCPDの修復が促進されるならば、APEの発現抑制などにより人為的に脱塩基部位を蓄積させることで細胞レベルでの検証に進む予定である。CPD修復の促進が見られない場合は、GAL4結合配列などを用いたテザリングシステムの開発を集中的に行う。 2.一分子イメージングによる損傷認識機構の解析 λファージベクターに化学合成した損傷オリゴDNAを組み込み、量子ドットで蛍光標識したXPCタンパク質複合体が損傷部位に到達する途中の過程を一分子観察することで、XPCの損傷認識機構を明らかにする。またUV-DDBについても量子ドットにより蛍光標識したものを作成し、同様に観察を行うとともにXPCとの損傷認識様式の違いを明らかにする。さらに余裕があれば、損傷を含むλファージDNAと精製ヒストンによりヌクレオソーム構造を再構成した上で同様の観察を行い、損傷認識過程に対するクロマチン構造の役割の理解を目指して研究を進めていく。
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