研究課題/領域番号 |
24241025
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
山本 哲也 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30320120)
|
研究分担者 |
宋 華平 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00611831)
牧野 久雄 高知工科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40302210)
岸本 誠一 高知工業高等専門学校, その他部局等, その他 (90177816)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 環境材料 / 表面・界面物性 / 水素 / プラズマ加工 / 電子・電気材料 |
研究概要 |
初年度は、化学吸着酸素の化学状態を自在に操る成膜技術の確立と測定評価装置の補強、これら2つが主な研究事項であった。目的である水素センサーデバイスへの応用には、水素ガスと酸化亜鉛薄膜表面での化学反応の結果、生成される水分子が、生成後、薄膜中へ浸漬、その負の効果として予想される電気的特性の変化に起因する感度劣化を誘発しないようにする表面制御が、必要不可欠である。 そこで、初年度は、温度60℃、相対湿度95%といった環境下で500時間後においても抵抗率の相対的変化率が10%以下となる薄膜実現を目指した。その結果、膜厚が 150nm、100nm 及び 50nm のいずれにおいても抵抗率の相対的変化率が10%以下となる薄膜の実現に成功した。本成果は特許出願済(名称:透明導電性酸化亜鉛薄膜、出願人:高知工科大学、発明者:山本哲也、宋華平、牧野久雄、出願期日:2013年3月13日、出願番号:特願2013-51053)である。また本成果を基に国際会議3件において発表予定である。 具体的には、薄膜成膜中において、酸素ガス流量を制御し、薄膜充填密度を増大させる効果を加えた。加えて疎水性効果が期待される添加元素を導電性制御の為の添加元素とは別に共添加し、前記2つの効果の相乗効果を図った。光学特性評価の解析から、酸素ガス流量の増大は薄膜充填密度を増大させることが定量的に明白となった。疎水性効果が期待される添加元素の変化量とSIMS(薄膜中の表面からの深さ方向における元素濃度の定量化)測定の解析結果から、ある添加量で水の浸漬と考えられる水素原子の浸漬がごく最表面だけに抑制可能であることがわかった。本成果と水素センシング特性との相関関係を次年度、検討する。 評価装置では微量ガス評価用装置を目指すべく既存の装置を加工した。高感度がとなる極性ガスである一酸化炭素で試みたその結果を国際会議で発表する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酸化亜鉛薄膜はこれまで、耐湿性に課題があり、国内外でその解決のための研究開発がなされてきている。この特性を活かした湿度センサーがある。一方で、当方の研究室では上記耐湿性は大きく膜厚に依存することがこれまでの研究で明確化をしてきた。高感度センサーにおいては、より膜厚を薄くした方が表面積の体積に対する割合が増大することで、感度の制御には有効であることが期待される。具体的には膜厚100nmにおいて、温度60℃、相対湿度95%といった環境下で500時間後では、抵抗率の相対的変化率は最大で68%にも及ぶ。 この課題を解決すべく、薄膜の充填密度制御可否(物理的効果)と表面疎水性制御の実現の可否(化学的効果)との2つの面に研究の焦点を絞った。前者は成膜中に成膜室内に流す酸素ガス流量で制御した。その結果、充填密度は従来の82%から、最大で96%まで増加せることができることがわかった。一方で、抵抗率の変化率はそれでも20%前後までしか削減できなかった。 そこで、第2解決法として、溶解度が小さく、さらに疎水効果を期待できると判断する共添加元素の検討を行った。 結果として、膜厚100nmにおいて、抵抗率変化率が3.7%まで抑えられることがわかった。膜厚50nmにおても抵抗率変化率が7%まで抑えられることがわかった。これら結果は国内外でも初めての良好な結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度の研究成果を活かし、より薄膜化する(目的は高感度となることが期待されるからである)ことと、これまでの膜厚での酸化亜鉛薄膜での水素センシング機能評価との両面を図る。主な研究項目は下記の通りである。 (1)環境耐性と水素センシング機能との関係を明白にする、(2)環境耐性と表面化学状態との関係を明白にする、(3)評価装置による評価結果の信頼性を明白にする。 具体的には次の通りである。 (1)環境耐性と水素センシング機能とが互いに正の相関があるか否かを検討する。仮に負の相関、すなわち、環境耐性が向上すると水素センシング機能が劣化する、場合には最適化が必要となる。しかし、環境耐性は水素センサーデバイスの信頼性そのものであり、この負の相関がこれまでの研究成果で得られた場合には、再度、方向性の検討を実施する。 (2)研究室独自開発のダブルX線源を用いたXPS装置の開発が並行して進んでいる。角度分解が可能となるように開発を進め、検討事項の推進を図る。 (3)評価法は国内外で使用される標準化仕様に可能な限り、近づけることを考えている。有識者とのセミナーを今年度も実施(平成24年6月19日産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門電子セラミックプロセス研究グループ主任研究員 申ウソク氏と合同セミナー開催)したが、来年度以降も実施する。
|