研究課題/領域番号 |
24241029
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
粟津 邦男 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30324817)
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研究分担者 |
石井 克典 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20512073)
間 久直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70437375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザー医療 / レーザー生体相互作用 / 中赤外レーザー / 低侵襲治療 / 疾患選択的治療 / う蝕 / 消化器がん / 内視鏡治療 |
研究概要 |
う蝕(虫歯)の低侵襲レーザー治療に関して、う蝕組織の主成分であるコラーゲンおよびう蝕細菌の吸収波長6μm帯の中で最適とされた波長5.80-5.85μmについて詳細な検討を行った。ウシ歯健全象牙質およびその脱灰物に対する照射効果をアブレーションの物理モデル(Blow-offモデル)を用いて評価し、波長5.80-5.85μm付近が最適であることがBlow-offモデルからも支持された。また、差周波発生方式のナノ秒パルスレーザーを用い、ヒト抜去歯う蝕象牙質に対して照射効果の検討を行った。波長5.85μm、平均パワー密度30 W/cm2、照射時間2 sの条件でレーザー照射を行い、健全部に比べて有意にう蝕部を切削可能なこと、すなわちう蝕部分を選択的に切削可能なことが分かった。切削の選択性が出るメカニズムの解明を目的とし、象牙質の硬さと切削深さの関係を調べたところ、柔らかい象牙質ほど切削深さが大きいこと、すなわち硬い健全部に比べて柔らかいう蝕部が切削されやすいことが分かった。また、同条件で切削した歯へのコンポジットレジン(充填修復物)の接着強度は、従来法のEr:YAGレーザーに比べて有意に高く、波長5.85μmのナノ秒パルスレーザーによる切削技術は歯科治療にとって有用なことが分かった。 消化器がんのレーザーを用いた内視鏡的粘膜下層剥離術に関しては、波長10.6μmの炭酸ガスレーザーを光源、中空光ファイバーを導光路とした専用装置を開発し、ブタ摘出胃に対するレギュラトリーサイエンスとしての非臨床試験およびミニブタに対する動物実験を行った。両実験において、ファイバー先端出力約10-15 Wで粘膜層の切開、約5-8 Wで粘膜下層の剥離が安全に行うことが可能な条件であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
う蝕の低侵襲レーザー治療に関しては、ヒトう蝕歯を用いてin-vitroレベルでの有用性が実験的に証明され、当初計画どおりに進捗した。 消化器がんの低侵襲レーザー治療に関しては、波長10.6μmの炭酸ガスレーザーと中空光ファイバー導光路を用いたプロトタイプ装置の開発が順調に進んでおり、それを用いた非臨床試験と動物実験のデータが蓄積され、当初計画以上に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
粥状動脈硬化およびう蝕の低侵襲レーザー治療に関しては、波長5.75-5.85μmのレーザー治療装置プロトタイプの光源として量子カスケードレーザーを考えているが、生体組織に対する熱的な影響の観点からパルス構造に問題がある。連携研究者グループの浜松ホトニクス株式会社と協力し、パルス構造の調整機構の開発および最適なパルス構造の詳細な検討に焦点を当て研究を進める。 消化器がんの低侵襲レーザー治療に関しては、開発中のプロトタイプ装置において、導光路の曲げとそれに伴う破損に関して問題が残っているため、より使いやすく安全な導光路への改良に焦点を当て研究を進める。
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