研究課題/領域番号 |
24241038
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金子 克美 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 教授 (20009608)
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研究分担者 |
藤森 利彦 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 准教授 (60586824)
南 太規 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 助教 (20642060)
TERRONES M 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 教授 (20597877)
CRUZ Rodolfo 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 准教授 (30597878)
TRISTAN F 信州大学, エキゾチック・ナノカーボンの創成と応用プロジェクト拠点, 研究員 (40597879)
伊藤 努武 千葉大学, 共用機器センター, 助教 (40586822)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カーボン / ナノ空間 / 高圧効果 / 反応促進 / 混合原子価構造 / 金属硫黄 / グラフェン細孔体 / カーボンナノチューブ |
研究概要 |
カーボンナノ空間の特別な反応加速効果あるいは化学活性を明らかにする研究目的に沿って、典型的なカーボンナノ空間を提供できるカーボンナノチューブ中での硫黄およびセレンの低次元系新規物質の創製、単層カーボンナノチューブバンドルのチューブ間空隙への分子修飾による新たな表面活性の創出、エッジカーボンの寄与を制御できるナノグラフェンからなる新規のグラフェン細孔体モノリスの創製を行った。ナノチューブ中での1次元硫黄鎖結晶は前年度に創製が確認されていたが、その物質系の理論的解析も進めて、その1次元硫黄鎖結晶が金属であることを証明して、ナノ空間への閉じ込めが90万気圧以上の圧縮に対応することを解明し、論文発表できた。またセレンについてもナノチューブ空間中でにピッチの長い特別な1次元構造になっていることを示し、カーボンナノ空間の特別な反応性を示せた。単層カーボンナノチューブバンドルのチューブ間空隙にカーボンエッジのモデルになる多環芳香族分子を導入すると、ナノチューブと分子間で電荷移動が起こり、ナノチューブ空間が電荷を帯び、4重極モーメントの大きな二酸化炭素分子の吸着活性が高められることを明らかにした。とくにニトロ基を持つナフタレンは単層カーボンナノチューブの極低温から温度上昇につれて、電気伝導度が室温近傍で半導体から金属へ転移するとみられる現象の再現性を確認し、その機構解明に向かうところである。また、グラフェンはsp2炭素からなる面が主であるが、ナノグラフェンはエッジにあるsp3炭素の寄与も大切になる。同時に高い表面活性を期待するために、ナノグラフェンから2000m2/gもの高い表面積、ミクロ細孔、メソ細孔およびマクロ細孔を有する多孔性グラフェンモノリスの創製に成功した。この活性の測定は今後の課題である。さらに単層カーボンナノホーンを中心にしてナノスケール窓の縁のsp3炭素導入も試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としたメタンを出発とする反応ではないが、カルコゲナイド系での全く特殊な1次元硫黄原子鎖結晶、1次元セレン原子鎖結晶の創製反応が迅速に進むことを、ほぼ完全に証明できた。これは目的に合致している。単層カーボンナノチューブバンドルについてはエッジが多い多環芳香族分子を、チューブバンドル間隙に挿入して、二酸化炭素吸着活性を制御できた。また、エッジ炭素と基底面炭素との制御を行うことのできる高表面積グラフェンモノリスの創製に成功し、これから2000度付近での加熱によって、ナノグラフェンサイズを制御しながらエッジ炭素を制御することができる段階に達した。これらのことから、本研究は目的を遂げつつある。
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今後の研究の推進方策 |
カーボンナノチューブ空間中の1次元硫黄についてはその構造変化の可能性を探り、ナノチューブ空間の持つ化学反応に対する超高圧圧縮効果を明確にする。ナノグラフェンモノリスについては高温処理によって結晶化度を制御して、sp3炭素とsp2炭素の割合を変えた系を創製して、吸着活性あるいは電気化学活性を検討する。特に二酸化炭素の還元活性および有機イオンの取り込み速度測定などを通じて、ナノ空間中の炭素の混合原子価状態の役割を明らかにする。単層カーボンナノチューブのバンドル間隙の特別な吸着活性についても、電子顕微鏡測定などを通じて、間隙内での多環芳香族分子の配列様式を解明して、C-Hエッジの寄与を明らかにする。また、単層カーボンナノホーンを制御した酸化によて、局所的なエッジ炭素を創製して、物質透過性あるいは化学反応性への寄与を明らかにする。
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