研究実績の概要 |
近年,材料のナノスケールの構造がタンパク質吸着に影響を与え,その吸着状態の違いが様々な異なる細胞接着を誘起することが示唆されている.このことは新しい生体適合性材料を設計する上で重要な知見になると期待できる.今年度は、親水部としてpoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine) (PMPC)、疎水部としてpoly(3-(methacryloyloxy)propyltris(trimethylsilyloxy)silane) (PMPTSSi)を有する両親媒性ブロックコポリマーを用いて、フィブロネクチン(FN)と同スケールのナノ相分離構造を作製し,ナノ相分離のパターン構造によるFN吸着状態の違いを解析した.可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により、poly(MPTSSi-block-MPC) (BP1)と poly(MPTSSi-block-MPC-block-MPTSSi) (BP2)を作製した.BP1, BP2共に仕込み比MPTSSi : MPC = 3 : 7 (モル比)で合成した.それぞれのポリマー溶液をコートした表面を透過型電子顕微鏡 (TEM)により相分離構造を確認したところ、BP1では25 nm程度の疎水性ドット状ドメインを有した構造であり,BP2は相が反転した構造が観察された.ELISA法により各基板上のRGD露出量を測定した.BP1, BP2, PMPTSSiの表面でRGDモチーフの露出度に有意差はなかった.また,RGDモチーフの露出量をQCMにより測定したFN吸着量で割ることにより,一分子当たりの構造変化度を算出した.BP1, BP2に比べPMPTSSiでは構造変化が小さい傾向にあり,ナノ相分離構造によってFNの構造変化がより誘起されたことがわかった.
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