研究課題
我々はSV40のメジャー外殻タンパク質の自己組織化能に着目し、外殻タンパク質のみから成るナノカプセルを形成する技術を開発した。また、その中に各種生理活性物質を内包する技術を開発した。特に、タンパク質を内包する際に、メジャー外殻タンパク質を裏打ちするマイナー外殻タンパク質を利用する技術を開発した。次に、細胞指向性を付与するために、遺伝子工学的や化学的手法により、メジャー外殻タンパク質の表面露出部分に外来のペプチドやタンパク質を導入する技術を開発した。それで、内包した生理活性物質を特定細胞の中に選択的に運び込める高機能性ナノカプセルの作製技術が確立した。作製した高機能性ナノカプセルを次世代医療に応用展開するために、新規DDS用キャリアとしての有用性を検討したが、外殻タンパク質の免疫原性が回避できず、その解決策に思案をめぐらせていた。丁度その時、免疫原性の活用法がふと頭に浮かんだ。それは、免疫原性を持つナノカプセルは、うまくアジュバントとして活用できるのではという考えである。そこで、病原性ウイルスやがん細胞のエピトープペプチドを挿入した改変外殻タンパク質をバキュロウイルス発現系で作製した。次に、それら改変外殻タンパク質から成るナノカプセルをマウスに投与すると、投与法の如何に関わらず非常に強いアジュバント効果を発揮した。エピトープ特異的な細胞殺傷性Tリンパ球(CTL)は顕著に活性化され、その度合いは従来のアジュバント製剤とエピトープペプチドの混合液の投与とは比較にならないほど大きいことから、高機能性ナノカプセルがワクチン製剤として実用化される可能性が出てきた。さらに、粒径20nmと28nmのマグネタイトを外殻タンパク質で被覆し、その表面に上皮成長因子(EGF)を化学結合し、EGF受容体の高発現がん細胞が移植された担がんマウスに静注すると、がん細胞検出用のMRI造影剤として有用であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画はほぼ達成できた。想定外の結果として、エピトープを組込んだ高機能性ナノカプセルが非常に強いアジュバント効果を持つことがわかったので、今後は、高機能性ナノカプセルのワクチン製剤としての実用化を視野に入れて、企業との共同研究を含めてさらなる応用研究へと発展させたい。
高機能性ナノカプセルをバキュロウイルス発現系および試験管内での再構成系で作製するいくつかの基本技術および関連ノウハウを構築することができたので、今後は企業と連携して実用化・製品化を目指して、応用開発研究に取り組むと共に、ナノカプセルの持つアジュバント効果に対する科学的な裏付け研究を推進する。
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