本研究課題では、材料工学的に魚うろこの階層構造と類似したコラーゲン線維配向層状構造の構築並びに細胞生物学的に細胞が算出するコラーゲン線維配向形成及びその構造変換物質の探索を目的としている。最終年度は、これまでに引き続き、流れ場中におけるコラーゲン線維形成を評価した。流れ場を層流(レイノルズ数3.06×10-3以下)にしたとき、底面温度を35℃にしたときに最も高い配向指数を示すコラーゲン線維膜が得られた。コラーゲン線維の直径は、温度と流速の関係により変化するが、流速を遅くすると(0.02m/s)線維系が120nmと太くなり、早くする(0.6m/s)と40nmと細くなることを明らかとした。これらは、コラーゲン分子の用いる基板への吸着とコラーゲン分子の自己組織化による線維形成の割合が関連していると考えられる。一方で、コラーゲンcDNAに二種類の蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだプラスミドを作製し、NIH3T3線維芽細胞に発現させた。用いたプラスミドには、コラーゲンの本体部分が緑色(EGFP)に、C末端側には赤色(mCherry)になるように蛍光タンパク質を組み込んだ。C末端の細胞上部への排泄挙動が明確に観察され、Z軸方向に沿って分担化(極性化)が観察された。これにより、世界で初めてコラーゲン分泌プロセスのライブイメージング化に成功した。また、分泌されたコラーゲンは、約100nm直径の線維を形成していた。
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