研究課題/領域番号 |
24241048
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
内橋 貴之 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30326300)
|
研究分担者 |
渡辺 洋平 甲南大学, 理工学部, 講師 (40411839)
飯野 亮太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70403003)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 一分子計測 / AAAタンパク質 / シャペロニン / 高速原子間力顕微鏡 / 蛍光顕微鏡 |
研究概要 |
本年度は、好熱菌由来のClpBの基板への特異的吸着法の検討を行った。ClpBのC末端に変異(K721C)を導入しBiotin-PEACn-Maleimideを付与した試料を準備した。一方、基板はアミノシラン処理したマイカをBiotin-OSUで修飾し、さらにストレプトアビジン分子をこていすることで、ClpBのN末端を上向きにして固定する方法を確立した。K721C変異体を高濃度ATP状態でインキュベーション後、高速AFM観察を行ったところ、ClpBの大多数が完全な六量体リングを形成していないことが分かった。また、リング構造が形成された場合でも、多くの場合6回対称の構造をとらず、非対称な構造をしていることが分かった。さらに、リング構造はダイナミックに揺らいでおり、リングの切断と再形成が時間とともに起こっていることを見出した。一方、ATPの加水分解能を低下させた変異体(Trap-ATP)では、対称なリング構造が形成されていることが分かった。これらのことから、ClpBはATP依存的にリング形成の安定性が変化していることが示唆された。 高速AFM/蛍光顕微鏡複合機の光学系の見直しを行った結果、一分子レベルで高速AFMと蛍光顕微鏡の同視野・同時観察ができるようになった。これを用いて実際に、ミオシンVの歩行運動やキチナーゼがキチン結晶上を連続的に移動様子を同時観察することに成功した。次年度には、このシステムを用いてF1-ATPseの構造変化と蛍光性ATPの結合過程の同時観察を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたClpBの高速AFMによる高分解能観察法は確立した。また、予期していなかったClpBの非対称なオリゴマー構造やリング構造の不安性を見出した。また、高速原子間力顕微鏡/蛍光顕微鏡複合機による一分子観察もできるようになった。蛍光性ATPの結合と高速AFMによる構造変化の同時観察を成功させるまでにはいたらなかったが、計画全体としては順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
ClpBの基板への固定方法や必要と思われる変異体はほぼ準備できた。高速AFMによる高分解能観察の条件も確立したので、今後は構造変化の観察に向けたヌクレオチドの濃度条件を検討し、高速AFM観察を継続していく。並行してClpBへの基質結合に向けた基盤準備を行う。 蛍光顕微鏡/高速AFM複合機による観察に関しては、まずは蛍光性ATPの結合とAFMによる構造変化の観察を成功させる。そのあとに、この手法により六量体ATPaseの構造変化とヌクレオチド結合の関係を明らかにしていく。
|