研究課題
基盤研究(A)
7割以上のヒトタンパク質はリン酸化修飾を受けていることが、独自の手法により、初めて明らかとなった。しかし、それぞれのリン酸化修飾を担うキナーゼまでわかっているものは数%程度しかなく、シグナル伝達ネットワーク解析の障害となっている。本研究では細胞内リン酸化ネットワークの分子基盤を解明することを目的とし、組換えキナーゼと組織細胞抽出物を用いたin vitroリン酸化反応解析・相互作用解析に加え、様々なキナーゼ阻害薬やキナーゼsiRNAによって撹乱されるin vivoリン酸化ネットワークの選択的変動をプロテオーム規模で解析することにより、リン酸化ネットワーク構成分子の相互関係を明らかにする。H24およびH25前期は(1)摂動による細胞内リン酸化変動データの大規模取得、(2) 組換えキナーゼを用いたin vitro リン酸化解析、(3) リン酸化ネットワークマップ作製のためのデータマイニングを行った。(1)では9種の分子標的薬を用いて検討を行った。質量分析計の日間変動が激しく、分子標的薬による効果が埋もれてしまうケースもあったが、様々なパラメータを最適化することにより、安定した測定が可能となってきた。(2)については、より多くのキナーゼ(変異体も含む)に対してデータを取得した。さらにリン酸化率を定量するための測定系の構築も行った。(3)についてはサポートベクターマシンを用いたキナーゼ基質相関の予測器の構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
測定機(質量分析装置)の故障で、大規模データの取得計画が少し遅れ気味であるが、その他の部分はおおむね計画通り進行しており、研究全体において大きな問題はない。
前年度に引き続き、(1)摂動による細胞内リン酸化変動データの大規模取得、(2) 組換えキナーゼを用いたin vitro リン酸化解析、(3) リン酸化ネットワークマップ作製のためのデータマイニングを行う。(1)については、引き続きキナーゼ阻害薬およびキナーゼsiRNA 摂動実験を展開する。変動が顕著でない場合や、感度が悪い場合には、細胞をあらかじめ各種ホスファターゼ阻害薬で処理し、細胞内リン酸化を活性化させた状態から摂動実験を行うことも検討する。また、キナーゼ阻害薬以外の標的分子を有する薬剤についても、そのリン酸化ネットワークに及ぼす影響をスクリーニングする。(1)(2)で取得されたデータを順次マイニングしてゆき、ネットワーク構築を開始する。それとともに摂動の種類間でのクラスター解析もすすめ、標的分子の類似性についても検討する。別に、リン酸化プロファイルを構成する具体的な分子情報を切り離して、摂動のfingerprint としてリン酸化プロファイルを用いる方法もバックアップとして検討する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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