研究概要 |
シグナル伝達機構の本質は、多彩な入力の情報を限られた種類の分子にコードすることにある。申請者らはERK経路や、Akt経路(藤田ら、Sci. Signal.,2010)の研究において、分子活性の時間パターンに入力情報がコードされる時間情報コードを世界に先駆け見出している。さらに現在、インスリン経路が時間情報を多重にコードすることや、時間情報コードが感受性を制御することを見出している(豊島ら、Nat. Commun., 2012)。 本研究では、以上の研究を発展させ、細胞内シグナリングの時間情報コードを解明してその生理学的な意義を明らかにするとともに、時間情報コードが様々なシグナル伝達に見られる一般的な特性であることを明らかにすることを目的とした。申請者らはラットの肝臓がん由来のFao細胞において、インスリンの3つの異なる時間パターンがpAktに多重にコードされ、下流の3つのシグナル分子(pS6K,pGSK3β, G6Pase)がそれぞれ選択的にデコードすることを見出した。 本年度は、シグナル分子の下流にある糖代謝やタンパク質合成などの代謝制御に時間情報コードが使われているかどうかを検討した。そこで、インスリンのさまざまな時間パターンを細胞に与えて、時間情報コードにより最終的な生理機能であるタンパク質合成やグリコーゲン合成、糖新生抑制といった代謝物質を計測した。このデータをもとにインスリンによる代謝制御調節ネットワークの微分方程式モデルの作成を開始した。
|