研究課題/領域番号 |
24241073
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
成松 久 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 研究センター長 (40129581)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 糖転移酵素 / 糖タンパク質 / 糖ペプチド / IGOT法 / 糖鎖機能 |
研究概要 |
糖転移酵素遺伝子に欠失を生じたモデル生物は、多様な生理機能の異常を呈す。種々の糖転移酵素の標的タンパク質を同定することは、生体内の糖鎖機能を理解する上で重要な鍵となる。本課題では、各糖転移酵素に特異的な標的タンパク質の大規模同定を行うために、これまでに作製した糖転移酵素の遺伝子ノックアウトマウス群を用い、糖鎖キャリア分子(糖ペプチド)をレクチン捕集し、N-結合型糖ペプチドを糖鎖付加位置特異的な安定同位体標識法(IGOT法)で標識し、LC/MSショットガン法で同定する事により、野生型マウスとノックアウトマウスとの比較グライコプロテオーム解析を行っている。 β4GalT1は最も解析が進んだ糖転移酵素ではあるが、同じ糖転移活性を有する複数のβ4GalTアイソザイムが存在しており、β4GalT1が生体内でどのように使い分けられているのかは不明であった。そこでまずは、野生型及びB4galt1(-/-)マウス肝臓よりβ1,4-ガラクトース末端をもつ糖ペプチドをRCA120カラムで捕集し、そのキャリアタンパク質を同定した。同定された全1176タンパク質のうち、181タンパク質が野生型マウス試料からのみ同定された。この結果は、B4galt1(-/-)マウスにおいて、これら181タンパク質には目的糖鎖構造(Galβ1-4GlcNAc)が形成されないことを示唆している。即ち、これらのタンパク質はβ4GalT1標的タンパク質であることが推定された。同定されたタンパク質のバイオインフォマティクス解析を実施した結果、β4GalT1標的タンパク質の分子性状に共通した特徴および傾向が見出された。現在、他の糖転移酵素、例えばLacdiNAc合成酵素やルイスx合成酵素等の遺伝子ノックアウトマウスでも同様の解析が出来るように系の構築を進めており、順次解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖転移酵素遺伝子ノックアウトマウスを用いて、グライコプロテオーム解析技術により、糖鎖キャリア分子を網羅的・ハイスループットに同定するための系の構築(レクチンの選定とレクチンによる捕集系の構築)のモデルとして、まずは最も糖転移酵素として生化学的に解析が進められてきていたβ4GalT1について実証実験を進めた。その結果、非常に多くの標的糖タンパク質の同定に成功し、それらのバイオインフォマティクス解析の結果から、β4GalT1が標的とするタンパク質の分子性状に共通した特徴および傾向を見出すことに成功した。ここまでの結果については論文として誌上発表に至っている。ここまでの検討・解析により、基本となる解析技術、手順などが確立できたが、別の糖鎖構造(別の糖転移酵素)をターゲットにした場合は、捕集するレクチン(あるいは抗糖鎖抗体)の選択や、捕集条件なども異なるので、それぞれに適した条件を模索する必要があると考えられる。その他の糖転移酵素遺伝子のノックアウトマウスについては既に樹立済みであるが、どの様な組織・細胞を対象として解析するのかについて随時検討しながら進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
アイソザイム特異的な標的タンパク質を(グライコ)プロテオームスケールで同定する本課題の解析手法によって、このような標的タンパク質の分子性状に共通した特徴および傾向が明らかになる。得られた結果を基に、特定のタンパク質に対し、特異的な糖鎖構造が選択的に付加されるメカニズムの解明が進むと期待される。 今後は生物学的に重要と考えられる糖鎖の生合成に関わる糖転移酵素の遺伝子ノックアウトマウス系統を使用して、それぞれの酵素が生体内で標的とする糖タンパク質分子を同定し、バイオインフォマティクス解析などを駆使することで、糖鎖の機能解明の一端とする。その為の、バイオインフォマティクスを中心とした新たな技術導入も考慮する。解析する順番などにも、1)(合成する糖鎖の)生物機能の観点、2)細胞・組織における遺伝子発現の程度、などから優先順位を設けて、順次解析を進める。 本課題の網羅的なグライコプロテオミクス解析により得られた標的糖タンパク質分子のデータ(糖ペプチド配列、糖鎖付加位置)については、データベース化なども進め、将来的には広く公開することで次世代の糖鎖研究の基盤としたいと考えている。
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