研究課題
基盤研究(A)
本研究は、RNAの造形力を利用した医薬品探索を目的としたもので、SELEX(人工進化)技術を用いて各種の創薬標的タンパク質に結合するRNA分子(アプタマーという)を創成し、1)サイトカイン阻害薬(アンタゴニスト)の開発、2)受容体作動薬(アゴニスト)の開発、3)細胞内送達(DDS)技術の開発、4)RNA造形力に関する構造生物学的研究、を実施した。平成24年度の研究成果の概要は次の通りである。1)各種の創薬標的に対するアプタマー医薬の開発は順調に進捗した。特筆すべきは、抗NGFアプタマーが動物実験でモルヒネと同等な鎮痛効果を示し、開発候補品の最終加工も完了して、ラット・サルを用いた予備毒性試験を完了した。同様に、抗IL-17Aアプタマーも開発候補品の最終加工が完了し、各種の疾患モデルマウスで薬効確認を進めた。また、抗FGF2アプタマーがGPI誘導関節炎の発症を有為に抑制することを確認した。2)FGF2受容体に対するアプタマーを創製し、FGF2シグナルによるErkのリン酸化を代替できるかどうかをin vitro細胞試験でスクリーニングした。その結果、複数の独立クローンがFGF2非存在下で弱いErkリン酸化を惹起することを確認した。3)抗ヌクレオリン・アプタマーは癌細胞表面に提示されるヌクレオリンに結合して細胞内にinternalizeし、核内に到達して抗癌剤として作用することが報告されている。抗ヌクレオリン・アプタマーを細胞内DDSツールとして改良あるいは新規創製する目的で、既存の抗ヌクレオリン・アプタマーのDDS性能についてはシステマチックな解析を実施した。4)ヒト転写因子AML1に対するアプタマーのNMR解析の結果、アプタマーRNAが通常のA型へリックスを変形してDNAのB型ヘリックス構造をmimicしていることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の最重要な目的は、アプタマー医薬品の開発を推進することであり、その視点で、複数のアンタゴニスト・アプタマーが動物で優れた薬効が確認され、予備毒性試験にまで進捗したことは、アプタマー医薬の実現に確実に近づきつつあると評価している。
研究実績の概要の冒頭で記述したように、本研究はRNAの造形力を利用した医薬品探索を目的としたもので、1)サイトカイン阻害薬(アンタゴニスト)の開発、2)受容体作動薬(アゴニスト)の開発、3)細胞内送達(DDS)技術の開発、4)RNA造形力に関する構造生物学的研究、の4項目がサブテーマで、その基本方針に変更はない。本研究はRNAに関する基礎研究と実用化という2輪をバランスよく駆動することが重要だと認識しており、その意味で、項目4)に関する研究をさらに充実させる予定である。
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