研究課題
昨年度LyarとBRD4の相互作用に翻訳後修飾が介在している可能性が示唆されたので、今年度はこの点をさらに明確にすることを試みた。そのために、LYARの翻訳後修飾をLC-MS/MSを用いたプロテオミクスの手法で詳細に解析し、アセチル化されたリジンの他にモノメチル化あるいはジメチル化されたアルギニン10箇所、そしてリン酸化されたセリン/スレオニン/チロシン10箇所を同定した。当初予測していたものよりも遥かに多くのアミノ酸に翻訳後修飾が存在することが明らかになった、そこで、まずこれらの内、BRD4が結合するLYARのカルボキシ末端側に存在するアセチル化部位に着目して、変異体の作成を試みたが、まだBED4の結合に必要な部位の特定はできていない。酵母ツーハイブリッドについても再度相互作用の存在の有無を確認したが、やはり二つのタンパク質の相互作用はこの系では検出できなかった。CheckMateTM/FlexiVrctor Mammalian Two-hybrid System キットを用いて哺乳類ツーハイブリッドによるスクリーニング系を構築し、二つのタンパク質の相互作用を調べたが、この系でBRD4を単独で発現した場合にもルシフェラーゼ活性の上昇が見られ、有意な相互作用は検出できなかった。LyarとBRD4の相互作用が他の作用因子が関わっているか否かを調べる実験として、核内でLYARと相互作用するタンパク質の同定を定量的観点から行い、可能性のある相互作用タンパク質を複数候補に上げることが出来た。同時に、転写部位とは異なる核内領域でLYARはリボソーム前駆体と相互作用があることから、このリボソーム前駆体においてLYARが担っている機能を解析した結果、LYAR がリボソームRNA前駆体の初期段階から後期段階に至るまでの広範囲のプロセシングに関与していることを明らかにした。
3: やや遅れている
LYARとBRD4の相互作用に翻訳後修飾と介在タンパク質の存在の可能性は予測されており、その観点からは想定内であり、当初計画した実験についてはおおむね予定通り進んでいる。しかし、想定外の結果として、翻訳後修飾の詳細な解析によってLYARには予想を超えた数と種類の翻訳後修飾が存在していることが明らかになった。このことから、BRD4と相互作用するために必要な翻訳後修飾の特定に、やや遅れが生じている。
LYARによるBRD4のrDNA上へリクルートを阻害する化合物のスクリーニング系の確立とその探索を目的としているが、これを達成するために、LYARとBRD4との間の相互作用を簡便に検出できるアッセイ系を構築する必要が有る。本年度は、昨年度に引き続き、ほ乳類ツーハイブリッド法による相互作用検出系の有効性を詳細に調べる。同時に、同定したLYAR上の翻訳後修飾部位に変異を導入したLYAR変異体を発現する細胞株を作製し、LYARとBRD4との生体内での相互作用に必要な翻訳後修飾とその部位の特定を試みる。また、個別に組換えタンパク質を作製し、in vitroでの相互作用検出系の構築を試みる。LYARとBRD4との相互作用に他の因子が介在している可能性を明らかにする実験として、LYAR複合体の定量的プロテオミクス解析で存在量が多い物から順番にLYARあるいはBRD4との間での酵母ツーハイブリッド法等による検討を行う。
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Genes to Cells
巻: 19 ページ: 273-286
10.1111/gtc.12129
http://www.tuat.ac.jp/~ntakahas/Takahashi_Lab_-TAT-/Research.html