研究課題/領域番号 |
24241076
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩原 正敏 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10208423)
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研究分担者 |
二宮 賢介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00437279)
細谷 孝充 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60273124)
片岡 直行 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60346062)
武内 章英 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90436618)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | タウオパチー / アルツハイマー病 / リン酸化酵素 / DYRK1A / タウ / 低分子化合物 / スクリーニング / ハイスループット |
研究概要 |
タウオパチーは難溶性化したタウ蛋白質が螺旋状の繊維を形成し、神経細胞内で「神経原線維のもつれ」として多量に貯留する神経変性疾患の総称で、アルツハイマー病、石灰化を伴う神経原線維変化病やピック病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、嗜銀顆粒性認知症など様々な病態を呈する。タウ蛋白質の難溶化・凝集線維形成の原因は、タウの異常リン酸化やタウmRNAのスプライシング異常であると考えられている。我々はダウン症や家族性前頭側頭葉認知症FTDP-17に着目して研究を行い、ダウン症患者でトリソミーとなる第21番染色体に位置するDYRK1A遺伝子の過剰発現が、タウ過剰リン酸化の主因であることを見出した。本研究では、独自のタウオパチー疾患モデルマウスを作製して仮説を検証するとともに、DYRK1A活性阻害やスプライシング操作によりタウを不安定化する化合物を見出しタウオパチーの新しい治療薬を創製することを目指している。 平成24年度は過剰リン酸化タウ蛋白質を発現するタウオパチーモデルマウスの作製を進めた。また、これらのマウスの病態解析のための病理学的解析系の構築および行動解析を行うための整備を行った。タウ蛋白質を不安定化する化合物のスクリーニング系の構築を進め、タウタンパク質を定量解析することが出来るセルベースシステムの構築を完了した。以上のように、平成24年度計画は十分に達成されており、平成25年度も引き続き効率的な研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本事業は、以下の3つのサブテーマ毎に効率的に実施され、平成24年度計画は十分に達成されたと判断した。 1)過剰リン酸化タウ蛋白質発現によるタウオパチーモデルマウスの作製:平成24年度の研究の結果、タウ蛋白質とタウリン酸化酵素DYRK1Aを2Aペプチドで連結し同時に発現させた遺伝子改変マウスは、タウオパチー様の表現型を示し、かつ発作等の行動異常を示した。しかしながら繁殖が極めて困難であるため、研究に供することが難しいという問題点が明らかとなった。平成25年度は、この問題点を解決するための方策を推進する。 2)過剰リン酸化タウ蛋白質発現マウスの病態解析:タウオパチー様の表現型を示した上記遺伝子改変マウスのリン酸化タウ蛋白質の蓄積を免疫組織化学やウエスタンブロットで解析するための分子生物学的実験系を整備した。さらに、タウオパチーで認められる行動異常、脱抑制、記銘や空間認知の障害などが、上記遺伝子改変マウスで起こるかどうかを検討するための行動解析を行うための整備を行った。 3)タウ蛋白質を不安定化する化合物のスクリーニング:平成24年度は、タウ蛋白質を不安定化する低分子化合物のスクリーニングのため、赤色蛍光蛋白質mCherryとEGFPタウ(緑色蛍光蛋白質EGFPとタウの融合蛋白質)を2Aペプチドで連結し、両者を同時に発現するセルベース・システムを構築し、アレイスキャンを用いたハイスループットスクリーニングが可能なシステムへと改善した。これにより大規模な化合物ライブラリーを対象としたスクリーニングが可能になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の3つのサブテーマ毎にこれまでの研究結果を踏まえて更なる効率化を進め、タウ蛋白質を不安定化する低分子化合物の同定を目指す。 1)過剰リン酸化タウ蛋白質発現によるタウオパチーモデルマウスの作製:平成25年度は、研究の迅速な推進を目的として、繁殖可能なリン酸化タウ蓄積のモデルマウス系の構築を進める。具体的には、新たな遺伝子改変マウスの構築の検討に加え、遺伝子改変に頼らないタウオパチー発症モデルマウスの構築を検討する。 2)過剰リン酸化タウ蛋白質発現マウスの病態解析:平成24年度に整備した実験系を用い、タウオパチー様の表現型を示した遺伝子改変マウスのリン酸化タウ蛋白質の蓄積を免疫組織化学やウエスタンブロットで解析する。また、リン酸化タウ蛋白質の蓄積によって引き起こされる脳の病理変化を検討し、アルツハイマー病やピック病などヒトのタウオパチーにおける病理組織像との異同を明らかにする。さらに、タウオパチーで認められる行動異常、脱抑制、記銘や空間認知の障害などが、上記遺伝子改変マウスで起こるかどうかを検討する。 3)タウ蛋白質を不安定化する化合物のスクリーニング:平成25年度は、構築したセルベーススクリーニングを用いた低分子化合物ライブラリーのスクリーニングを行い、タウ蛋白質を不安定化する化合物の探索を進める。具体的には、研究室保有の低分子化合物ライブラリーを用いて、mCherryとEGFPタウの量比を蛍光またはウエスタンブロットもしくはアレイスキャンにより計測し、量比を変動させる化合物を探索する。また得られたヒット化合物からの合成展開を進め、活性の高い化合物の取得を目指す。
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