研究課題
タウオパチーは難溶性化したタウ蛋白質が螺旋状の線維を形成し、神経細胞内で「神経原線維のもつれ」として貯留する神経変性疾患の総称で、アルツハイマー病をはじめとした様々な病態を呈する。タウ蛋白質の難溶化・凝集線維形成の原因は、タウの異常リン酸化等と考えられている。我々はダウン症や家族性前頭側頭葉認知症に着目して研究を行い、ダウン症患者でのDYRK1A遺伝子の過剰発現が、タウ過剰リン酸化の主因であることを見出した。本研究では、疾患モデルマウスを作製して仮説を検証するとともに、タウを不安定化する化合物を見出し、新しい治療薬を創製することを目指した。平成26年度は、タウオパチーを模倣したモデルマウスの作製を進めた。具体的には、急性ストレス負荷による脳内タウリン酸化亢進モデルに加え、慢性ストレス負荷の効果を検討した。その結果、ラットにおいて慢性ストレス負荷によって持続的なタウリン酸化の亢進が認められた。これらストレス負荷モデルを用いて、これまでに開発してきたタウ不安定化誘導化合物の有効性を検証した。しかしモデルマウスへの当該化合物の投与では、ストレス負荷によって亢進するタウリン酸化を抑制することは出来なかった。我々は、この原因が化合物の体内動態にあると考え、質量分析装置を用いて当該化合物の体内動態解析を行った。その結果、投与後30分から90分で脳内濃度が約1μMとそれほど高くないことが明らかとなった。培養細胞レベルでの薬効は、nMオーダーで認められていることから、このギャップには、培養細胞と脳神経の性質の違いが関与する可能性が考えられる。脳移行性の向上を目指した化合物合成を進め、幾つかの構造類縁体の合成に成功しており、今後さらなる有効性の検討を続ける。これまでに得られたタウ不安定化誘導化合物の開発における基礎研究の成果は、学術論文として発表するため、投稿の準備を進めている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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