研究課題/領域番号 |
24242009
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
住吉 朋彦 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (80327668)
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研究分担者 |
堀川 貴司 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (20229230)
小倉 慈司 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (20581101)
陳 捷 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (40318580)
金 文京 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (60127074)
佐藤 道生 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60215853)
大木 康 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
高橋 智 慶應義塾大学, 斯道文庫, 教授 (80216720)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宮内庁書陵部 / 漢籍 / 書誌学 / 宋刊本 / 旧鈔本 / 伝来 / 金沢文庫 / 紅葉山文庫 |
研究概要 |
本年度は、当初に研究実施準備集会を開いて5年間の行動計画を策定、続いて書誌調査準備集会を開き、調査の指針となる「書陵部蔵漢籍調査要項」を定めた。次いで研究代表、分担者の8名による書誌調査を開始すると共に、大学院生を中心とする参加メンバーを募り、前半期に計14回の漢籍書誌調査法の研修会を行って、5名の調査研究員を養成、後半期の開始までに13名による調査態勢を整えた。また後半期にも計19回の研修会を実施、既修生の実力涵養に努めると共に、新たに7名の調査研究員を加え、年度末には総計20名からなる調査態勢を確立した。 書誌調査の進捗は、当面の目標である宋刊本、旧鈔本の調査に着手し、13名の研究メンバーにより、9ヶ月間にのべ164日の調査を実施した結果、24年度末時点までに、全138部8062点(宋版一切経類2部約6842帖を含む)のうち、57部447点の調査を完了した。調査データの内容については、計6回の検討会を開催し、26部256点について整訂を行った。 また年度前半には、収集すべき画像データの仕様を研究、策定し、後半期にはその仕様に従って、デジタルカメラ撮影及び、マイクロフィルムのスキャニングによるデータ取得の委託を開始、年度末までに宋刊本、旧鈔本のうち、25部222点について撮影を完了、12,992カットのカラーデジタルデータを取得した。加えて1部6263帖のスキャニングを実施、145,711コマのモノクロームデジタルデータを取得した。 さらに年度の後半には、上記の諸データを統合すべく、「書誌書影データベース」と「全文画像データベース」を目録の下に関係付けた、デジタルアーカイブの構築を開始、ウェブ公開を前提としたシステムを考案して、書誌データ整訂済みの26部につき、書誌の検索表示と、全文画像が閲覧可能なデータベース「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」を試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の柱である、漢籍書誌調査員の養成、書誌調査と書誌データの作成、デジタル画像の取得とデータベース構築の3点について、まず調査員の養成は、当初の計画では30回の研修会を実施して5名の増加を得、26年度当初までに20名の態勢を布く予定であったが、24年度に34回の実施で12名の調査研究員を増加し、当初計画を前倒しして、25年度当初から20名の調査態勢を布く準備が整った。 また書誌調査と書誌データ作成は、25年度までに宋刊本、旧鈔本のデータ作成を完成するとした目標に対し、初年度に部数換算で40%の調査を完了したため、25年度に人員と時間の増加する点を考慮すると、24年度に倍する進捗が期待され、データの作成点検も着実に進行しているため、この部門はほぼ計画通りの進捗情況と言える。 一方、デジタル画像の取得は、27年度までの完成を目指していたが、24年度に部数換算で18%の達成、但しこれには、点数換算で全体の77%を占める宋版一切経1部6263帖を含むから、作業から見ると50%以上の進展であり、26年度末までに取得を終わる見込みとなった。この点は計画以上の進展と言える。さらに、デジタルアーカイブ化の基礎作業である、データベース基本システムの開発が終わり、データ流し込みの作業に掛かって、25年度中には、第一のデータベースとなる「書誌書影データベース」を公開する目途も立ったことから、書誌データの作成が比較的遅れているが、書誌データ作成済みの書目では「全文画像データベース」の画像データの加工に着手することができたから、この部門は計画通りの進捗と言える。 以上を勘案すると、各部門計画通り、または計画以上の進捗であることから、総合的には当初計画以上の進展と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度以降は、研修の継続による推進力の増加を図りつつ、宋刊本、旧鈔本のデータ作成の完了を目指す。また元明版、五山版などの次善の版本をも含むべく、調査の対象を広げる準備として、書陵部蔵書の様々な伝来に即した「家別」の種別を取り入れ、研究メンバーによって個々の家別を分担し、研究組織の強化を行う。さらに、データベースの実装を見越し、伝本ごとに特色を説明する解題を備えるため、書陵部蔵書に止まらない、幅広い資料の蒐集と調査研究を開始する。宋刊本、旧鈔本の書誌調査は25年度までに完了、「書誌書影データベース」を構築し、関係機関内に公開する。 26年度からは、家別に従う書陵部蔵書の書誌調査を進めるとともに、関係諸伝本との比較研究を重視、内外諸機関への調査出張を実施し、書誌データの補訂を行う。また比較研究を経た書目につき、著録担当者が執筆して、個別の解題を作成し、書誌データに附加する。宋刊本、旧鈔本のデジタル画像データ取得は26年度中に完成、随時「全文画像データベース」の構築に供する。 27年度からは、さらに書誌調査と解題執筆を進め、新たに家別ごとの文化史的意義を検討し、蔵書研究の完成を展望する。デジタル画像の取得については、元明版以下の書目を対象に、家別ごとに日本文化史上の意義を象徴する書目を選定し、全文画像を増加する。データベース部門では、27年度中に宋刊本、旧鈔本の全文画像データベースを完成する。 28年度は、家別ごとの担当を再び合流させて、書誌データの取得に全力を挙げ、漢籍分類目録の再編を期する。デジタル画像の蒐集は、前半期まで継続する。データベース部門では、データ維持の環境を確立して、所蔵者の許可を得たのち、宋刊本、旧鈔本の全点を中核とする、「書誌書影データベース」と「全文画像データベース」を含んだ、デジタルアーカイブをウェブ上に公開する。
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