研究課題/領域番号 |
24242018
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
境 一三 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (80215582)
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研究分担者 |
丸田 千花子 慶應義塾大学, 経済学部, 講師 (00548414)
吉川 龍生 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (30613369)
平高 史也 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (60156677)
山下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (20383383)
治山 純子 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター, 助教 (50708451)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 複言語 / 複文化 / CEFR / 一貫教育 / 気づき / マイノリティー / 第2外国語 |
研究概要 |
2012年度から3年にわたる本研究は、日本ではまだ本格的に行われていない、英語を含む複数の外国語の一貫教育における、複言語・複文化能力養成を対象とするものである。具体的には、慶應義塾で中学段階から行なわれている外国語教育において、語種を横断した横の連携を確保しつつ、中学・高校・大学といった学習段階の縦の接続を十全に機能させて、生徒・学生の複言語・複文化能力を養成するために、人材養成を含む教育システム作り、カリキュラム・教材・教授法の開発を行うことを目的とする基礎的研究である。 特徴としては、海外において日本を代表して発言できる能力だけでなく、多言語化する日本社会のリーダーとして、異言語・異文化に開かれた態度、社会的マイノリティーや言語的弱者に対する「気づき」の能力を備えた人材作りを視野に入れていることである。 2013年度においても、主に班ごとの活動を行ったが、その成果は1学期に1回開催した全体集会で報告し、成果を共有した。特に2013年度に注力したのは、2012年度に行った、大学の第二外国語既習者クラスの実態調査(学生と教員に対する質問紙調査)の分析である。量的調査の分析によって、現状の概要が把握できたので、2014年度には、更に精緻化を図るためにインタビュー調査とその分析を行う予定である。 この他、中国、イタリア、スイス、フランスの幼稚園、小学校、中学校で授業を参観し、担当の教員、学校管理職や大学の専門家に聞き取り調査を実施して、早期外国語教育、マイノリティーの言語教育と複言語能力養成などについて情報を収集し、知見を高めた。特に、イタリア・アルト・アディージェ州とスイス・ジュネーブ市では、幼児・児童の言語に対する気づき教育の現場を視察し、ヨーロッパで推進されている複言語複文化能力養成の実態の解明に努めた。 また、複言語・複文化能力養成のための教材開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、主に以下の3点を目的として活動しているが、それぞれについて2013年度の達成度について記述する。 1)「生徒・学生の複言語・複文化能力を養成する具体的な教材モデル・授業案の作成」:本項については、ヨーロッパで開発された先進的な教材、特に欧州評議会の CARP を参考にして、日本の現状に適合した教材開発に取り組み、一定の成果を挙げた。また、中国とヨーロッパにおける幼稚園から高等学校までの教育現場で、複言語・複文化能力育成のために具体的にどのような教育が行われているかを視察することにより、日本の教育への示唆を得た。 2)「英語教育、第二外国語教育の中等・高等教育をつなぐ連携カリキュラムモデルの開発」:本項については、慶應義塾大学の第二外国語既習者クラスにおいて2012年度に行った、教員と学生を対象とした質問紙調査の結果分析をを行った。また、中国とヨーロッパにおける実地調査で、それぞれの現場において、言語教育の継続性確保のために何が行われているのかについて、視察並びに教員、担当官僚らへのインタビューを行い、具体的な知見を得た。また、関西の私学における、外国語教育の一貫性についても、調査を行った。 3)「第二外国語教育における共通参照レベルの現場に即した細分化モデルの精緻化」:CEFR の共通参照レベルを日本の教育現場に応用するには、現場に即した細分化モデルが必要であるが、その作成作業の基礎となる実態把握を、上記調査等により、さらに進展させた。 以上の成果は、研究班ごとの会合、およそ月に一回開催した分担者会議、一学期に一回開いた全体会によって共有化が図られた。これにより、本研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、複数外国語教育を通して、早くから複数の言語や文化に触れることで、言語・文化的な「気づき」能力を養成し、異なるものへの心を開く教育を実現するための制度・人的リソース・カリキュラム・教材・教授法などについて考究している。 最終年度となる2014年度に予定する研究活動は、以下の通りである。 1)2013年度実施した、慶應義塾内の第二外国語教育における一貫性の現状に関する実態調査の結果分析をもとに、インタビューによる質的調査を実施し、実態の解明を進め、改善に資する制度構築案を作成する。2)また、そこで用いられている教材を、複言語・複文化能力と「気づき」の育成の観点から継続的に検証し、日本の現場に適合したものととする研究をさらに進め、具体的な教材モデルを作成する。3)これまでに実地調査したヨーロッパ、アメリカ合衆国、中国の言語教育の実態分析を、言語教育の一貫性の促進と複言語・複文化能力養成の視点から進める。また、上記調査にで不十分であったところを補うべく、追加調査を行う。4)上記研究に基づくカリキュラム・シラバスモデル作りと、複言語・複文化能力、「気づき」を涵養する教材作りをさらに進め、その成果を学会等で発表すると同時に、論文化する。5)本研究全体のまとめとして、報告書を作成する。6)最終研究報告会を兼ねたシンポジウムを開催し、外部の研究者から本研究の成果についてコメントを得る。
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