現代的および世界史的視点からみた日本の戦歿者慰霊に関する総括的研究

2012 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24242026
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 中京大学
• 研究代表者: 檜山 幸夫 中京大学, 法学部, 教授 (40148242)
• 研究期間 (年度): 2012-10-31 – 2016-03-31
• キーワード: 戦争記念碑 / 戦歿者慰霊 / 戦歿者墓碑 / 戦歿者墓地 / 軍人墓地 / 忠魂碑 / ヨーロッパ / 台湾

研究概要

本研究は、日本の戦歿者慰霊について、日本人と戦争を主題に、国際的視点に立って、社会文化史的観点から国民の意思を表明している「もの」史料たる戦争記念碑と戦歿者墓碑を基に実証的に解明するものである。つまり、研究は戦争記念碑・慰霊碑や各種記念碑と戦歿者・犠牲者墓碑石という「もの」史料を調査収集し、そこに表現されている形状や文字情報と関係者への聞き取り資料や関係文献資料とを包括して詳細に分析し、それらの碑や墓碑石が何を語り主張し伝えようとしているのかを読み取るとともに、それらが当該国や地域並びに国際的にもっている意味や意義とは何であるかを解き明かすことを目指したものである。
このため、「もの」資料の調査収集は、日本国内では全国的な視点から調査地を選択し実地調査を行い、世界的な視点からは、日本と同じ立場にある国、過去の戦争をめぐって分裂したり内部矛盾を抱えている国、日本と反対極にある国、日本の戦争遺跡を残している国、日本と外国問題をも抱えているアジア諸国などにおいて象徴的事例を中心に現地調査を行うことにした。
本年度は、現地調査としては、国内が沖縄の内部と久米島・北海道でアイヌ人戦歿者慰霊に関する聞き取り調査及び北海道護国神社など・東京で靖国神社・千鳥ヶ淵戦没者墓苑などを、海外においては台湾で忠烈祠・忠霊祠・国軍墓地などを、スペイン・イタリア・ギリシャ・ジブラルタルで関係機関での聞き取り調査と各地にある戦争記念碑や戦歿者慰霊碑、一般墓地や軍人墓地で墓碑石、ユダヤ人犠牲者や内戦及び弾圧などによる犠牲者の慰霊碑などを調査し関係史資料を収集した。
調査収集してきた史資料を分析したり集積してきた研究成果もとにそれらの内容を検討しかつその補助として専門的分野での智識の提供をうけるために研究会議を2回行った。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は初年度であることと研究期間の制約があったにもかかわらず、予想外の大きな成果を収めることができた。前者の研究期間という時間的制約については、物理的問題には主に現地調査において工夫を凝らし調整を行うことによって克服することができた。研究の内容的問題については、研究課題に関する問題を概括的に把握するための検討と、資料調査地の詳細な選定とその実施並びに新たに浮上した研究課題に臨機応変に対処することによって機能的に研究を推進することができた。その結果、当初立案した研究方法と研究計画の通りに研究を進めることにより研究目的を達成することができた。
研究成果としては、今回の研究を遂行する過程で大きな発見がありそれが本研究の目指す問いに対する回答を導く有力な事例であることが判ったことは大きな成果である。勿論、それだけでは十分ではないことから、今後の研究を展開していくなかで関係史資料を調査収集しより確実な根拠資料を確保していくことが必要である。いずれにせよ、この発見によって、本研究が当初考えていたより遥かに大きな広がりと可能性をもったものであることが判ってきた。今後は、これらを踏まえ、そこで得られた新たな史資料を基に、研究をより発展させ成果を確実に上げることができるものと思われる。

今後の研究の推進方策

2012年度の経験を踏まえるならば、本研究課題の推移方針については特段に大幅な変更を行う必要ないものと思われるため、当初立案していた研究計画にしたがって行っていくことにしたが、今回の発見によって広がりを持つことになった研究の幅をより確実に掴んでいくために、それらを包含した研究計画を立案していくことにした。
なお、今回においても調査収集してきた「もの」資料の資料情報は、貴重な成果物であるとともに広く社会や学界に提供すべきであり、それを基に多くの研究者が本研究課題に取り組んでいけるようにするため、資料情報の電子化と公開提供の方法を模索していく。