本年が最終年度であることから、①研究を纏めるために収集してきた調査資料データ(電子データ約2テラ分)を整理しこれを基に分析し理論化する作業を行うこと、②本研究で収集してきた資料情報は戦歿者慰霊と戦争記念碑の研究にとっても貴重な歴史史料であることからそれを学会などに公開提供することができるような戦争記念碑データベース化を可能にするための基礎的作業を完了させること、③今までの調査で調査未了の地域と事項について調査を完了させること、④この研究において新たに判ってきた事実に関する事例を検証可能な域に達するように探し出し収集すること、⑤本研究の纏めとしての研究報告書を作成するとともに、本研究により従来の定説を覆す発見があったことから、それを論証する論文を発表すること、との方針の下に研究を行った。 ①と②は予定通りに行うことが出来た。③については、国内では護国神社と舞鶴における引揚関係資料の追加調査及び国外での独波洪伊仏五ヶ国における戦後の記念碑を含む資料調査とその収集を行い、④についてはイタリアを中心に新たに判ってきた事項についての調査を行い、⑤については研究代表者が日本における戦歿者慰霊と戦争記念碑の原点を国家ナショナリズムではなく西南戦争という内戦と近代国家建設に地域ナショナリズムに求めなければならないと論証した論文を『中京法学』に発表した。なお、この論証に用いた詳細な資料データも、②において提供することにしている。 この研究によって、戦歿者慰霊と戦争記念碑という戦争記憶の記録化と伝承に関する研究は、一国史的概念や戦前期に拘りすぎる狭量なものではなく、世界史的で国際的視点と現代に視点を置いた近現代史という時間軸による研究とを有機的に結合した総合的研究によって、日本の戦歿者慰霊と戦争記念碑の特徴を解明することが出来ることが判った。
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