研究課題/領域番号 |
24242032
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
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研究分担者 |
百原 新 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00250150)
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
中沢 道彦 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40626032)
木下 尚子 熊本大学, 文学部, 教授 (70169910)
佐々木 由香 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70642057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 圧痕法 / 栽培植物 / 家屋害虫 / 軟X線 / X線CT / 潜在圧痕 / モンゴル |
研究実績の概要 |
本年度は、圧痕法の理論・方法論の確立のための取り組みとして、軟X線装置を導入して、悉皆調査を開始した。その検証事例として、富山市平岡遺跡において一部資料を軟X線により調査し、肉眼調査との圧痕検出率の差についての情報を得て、報告を行った。また、同様の目的で佐賀県嘉瀬川ダム関連遺跡出土資料を同手法によって継続調査中である。また、本調査法によって得られたデータをもとに、「圧痕の意図的混入」についての検証法について一定の見通しを得て、論文を投稿中である。もう一つの方法論確立のための試みである、報告済み資料と未報告資料の圧痕出現率の差の検証については、対象遺跡である宮崎市本野原遺跡において調査を完了した。今後論文作成の予定である。 資料調査に関しては、国内においては縄文時代を中心とした10箇所ほどの遺跡において圧痕調査を実施し成果を得ている。また、国外では、モンゴル科学アカデミー考古学研究所所蔵の匈奴時代の土器の圧痕調査を実施し、6個の完形土器からキビ有ふ果圧痕を検出することができた。 また、もう一つの目的である、同定マニュアルの作成に関しては、道免き谷津遺跡と雷下遺跡の文時代~弥生時代の植物遺体の調査をもとに、写真撮影を行い,同定マニュアルに使用する写真のストックを充実させた。 これらの研究成果については、著作物による公開のほか、各種学会や研究会、一般市民向けの講演会などで積極的に情報発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、1.圧痕法による栽培植物や家屋害虫の検出を国内外の地域に拡大すること、2.圧痕法の理論と方法を整備する、という2点にある。1に関しては、中国上馬石遺跡の報告の刊行、モンゴル国内の匈奴遺跡出土土器の圧痕調査、国内では中部・関東・北陸・九州の縄文時代遺跡の圧痕調査などを実施し、一部については報告を行うなど、着実な成果を得ることができた。2に関しては、①軟X線を用いた潜在圧痕の検出手法の開発、②軟X線・X線CTを用いた検出圧痕に基づく種実の意図的混入の実証研究を行い、圧痕法に係る方法論や理論はほぼ確立できた。 これら成果については、研究論文や調査報告において果たしている他、一般向けの冊子や展示図録などにおいて、一般市民への研究成果の公開も行っている。これは前年度の課題を一歩改善したものと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の一つであった、圧痕法の調査法の確立および理論の構築に関してはほぼ完成の域に達したものと思われる。この結果、調査法については、圧痕調査専用の機器の開発ではなく、既存の機器を用いて十分に検出が可能であることが証明できた。今後はこれらの実証研究を積み重ねる必要がある。ただし、軟X線・X線CTを用いた圧痕調査においては、潜在圧痕の同定技術の向上という人的能力の問題、植物学的同定との整合性などの問題点が浮上してきた。これらについては、来年度の総括シンポジウムにおいて、共同研究者たちと議論の中で方法を模索したい。また、圧痕法の理論については、「種実の意図的混入」の立証と「種実・昆虫圧痕の形成過程」について一定の見解を示すことができたが、さらなる検証研究が必要である。これらの問題点の解決のため、研究事例を追加していく。
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