研究課題/領域番号 |
24242035
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70378826)
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研究分担者 |
高木 智世 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (00361296)
金子 守恵 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (10402752)
木村 大治 京都大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40242573)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 子ども / 生態・環境 / 相互行為 / 教育・学習 |
研究実績の概要 |
代表者はこれまで,相互行為における応答の力を基礎として,子どもと養育者の双方が責任を文化的に形成していく仕組みを明らかにしてきた.本研究の目的は,その成果と理論枠組みに立脚して,子どもの教育・学習が成立する基盤を再考することである.そこで,日本を含むアジア・アフリカ諸国で,(1)リズム,(2)模倣,(3)交換に関する養育者-子ども(誕生~4歳)間相互行為についての実証的データを収集・分析する.さらにこれらを関連づけ,各集団における教育・学習の様式を基礎づけている文化的・生態学的な構造を明らかにする. プロジェクト3年目となる平成26年度は,平成26年12~平成27年1月にかけてボツワナに滞在し,グイ/ガナの言語的社会化に関する資料収集と現地でのフォローアップ調査を行い,得られた資料に基づいてボツワナ大学の教員らと議論を行った. 日本国内では,乳幼児がいる家庭10軒(乳幼児は計28名)の定期訪問で得られた(1)リズムの発達,(2)模倣の発達,(3)交換の発達に関する研究資料の解析を進めた.具体的には,おもに動画資料に基づくジェスチャーや会話の書き起こしに基づいて,共同研究者と組織的な分析を行った. 並行して,国内外で月に1回程度のデータセッションを行ってきた.平成26年度は特に,交換の発達について集中的に検討し,子どもは社会的状況で適切に振る舞うことに動機づけられた行為を積み重ねる中で,相互行為上の互酬的な規範を参照するようになることを明らかにした. これらの研究成果の一部について,代表者が定期的に主催してきた国際ワークショップ(「教育・学習の人類学セミナー(2014年度は計4回開催)」)等,国内外の研究集会で議論した.代表者は本プロジェクトの主要な成果の1つとなる英文単著を出版した.また調査参加者に向けた報告書を作成し,保護者に配布するとともにHPに掲載した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,研究員1名と技術補佐2名を採用して研究資料の収集・解析を進めた.研究代表者は南部アフリカでのフィールドワークを行い,目的に記した3つのテーマに関連した調査を行った.さらに研究代表者の本務校で8回に渡ってデータセッションを行い,分析の妥当性を検討した.本報告書に記したように,研究の成果は単著,共著,学術雑誌の論文,学会等での発表として公表した.また,本プロジェクト独自に作成したHPでは,プロジェクトの進行や成果を随時公開している.平成26年度は,とくに英文HPの内容を充実させた.また国内外から研究者を招き,4回に渡って「教育・学習の人類学セミナー」を主催して本プロジェクトに関する議論を行った.また調査協力者(保護者)向けの報告書を発行した.したがって,本年度の目標として据えた課題はおおむね達成しえた.
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトの3年目となる平成26年度は,交付額が当初の申請額より33%程度減額されたが,当初予定していた南アジアと東南アジアでの動画資料の収集・分析のために研究協力者の動画資料を活用したり,すでに日本に来日している海外の研究協力者に国際ワークショップでの発表を依頼したりして,研究費の節約に努めた.その結果,プロジェクトの基本方針を変えることなく,目標として据えた課題をおおむね達成することができた.事業最終年度となる平成27年度も引き続き,申請書に記した計画・方法に沿ってプロジェクトの運営を進める.ただし,平成27年度の交付額は当初の申請額より33%程度減額されることが予想されるので,当初予定していた長期フィールドワークを短縮するとともに別予算で来日している海外の研究者に国際シンポジウム等での研究協力を依頼するなどして予算の節約に務める予定である.
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