国家による「非営利型移転」の支援と公共サービスの設計

2013 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24243003
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 高木 光 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60114526)
• 研究分担者: 服部 高宏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00218504) ; 洲崎 博史 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20211310) ; 稲森 公嘉 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20346042) ; 岡村 忠生 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30183768) ; 仲野 武志 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50292818) ; 木村 敦子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50437183) ; 毛利 透 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60219962) ; 尾形 健 同志社大学, 法学部, 教授 (60368470) ; 原田 大樹 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90404029) ; 船越 資晶 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70362548) ; 山本 敬三 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80191401)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2016-03-31
• キーワード: 非営利 / 高齢化 / 保険 / 家族 / 医療 / 介護 / 再分配 / 消費課税

研究概要

研究の第2年度として，資料収集などにより研究インフラの充実に努めながら，5回の研究会を開催し，論文等の研究成果を発表した。また，米国（ペンシルヴェニア大学），ドイツ連邦共和国（フランクフルト大学，コンスタンツ大学），連合王国（British Library）で調査及び研究報告を行った。
これらの活動を通じて，理論・総括チームは，個人の自律性の観点から統治機構論の諸論点を考察するとともに，医療保障法の合憲性をめぐる合衆国最高裁判決の検討や，日本における生活保護法上の老齢加算廃止違憲訴訟の検討など，日米の比較検討を通じた「生活の質」保障の憲法論的研究を行った。家族法・契約法チームは，家族内の非営利型移転について，法的親子関係の側面に関する検討・分析を行ったほか，家族内の財産管理・移転に関する諸制度（相続制度，夫婦財産制，離婚後の給付）の意義について，個人の意思の自由の観点からアプローチした。社会保障・私保険チームは，傷害保険契約の意義・守備範囲や保険商品・サービスの提供のあり方，日本とフランスにおける医療保障給付の比較検討を行った。また，ケアの担い手と国家の支援のあり方につき，ドイツの他，日本の明治・大正・昭和初期の議論も検討した。行財政再分配チームは，再分配に関わる国家作用の変容に対する理論的整序を図るための基礎理論研究を進め，租税と社会保障給付の関係につき，従来から議論されている税と保険料の差異の問題に限定することなく，国家が租税特別措置や保険料減免により私人に給付を行う方法（間接給付）にも注目すべきことを確認した。また，行政作用による再分配の対象となる行政上の不可分利益と司法作用による再分配の対象となる民事上の不可分利益との性質上の差異を明らかにし，民事訴訟による行政処分の代替可能性を検討した。さらに，消費課税による再分配効果を，人の潜在的所得獲得能力の観点から考察した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

文献調査やゲストスピーカーを招いた研究会や外国での調査などから豊富なインプットを得つつ，相当数の研究成果を発表した。

今後の研究の推進方策

外国研究者を招聘した研究会において，これまでの研究成果を吟味する。研究成果を順次発表しつつ，研究会や文献調査を継続し，研究目的の達成に近づけたい。

研究成果

• [雑誌論文] 社会観念審査の変容―イギリス裁量論からの示唆 (2014)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 雑誌名: 自治研究 巻: 90巻2号 ページ: 20-34
• [雑誌論文] 吐物誤嚥事件と傷害保険における外来性要件 (2014)
  • 著者名/発表者名: 洲崎博史
  • 雑誌名: 損害保険研究 巻: 75号 ページ: 109-134
• [雑誌論文] 新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について～金融審議会「保 険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」報告書の概要～ (2014)
  • 著者名/発表者名: 洲崎博史
  • 雑誌名: 生命保険論集 巻: 187号 ページ: 掲載予定
• [雑誌論文] 統治のあり方と補完性原理―ドイツの経験から― (2014)
  • 著者名/発表者名: 服部高宏
  • 雑誌名: 東北学院大学法学政治学研究所紀要 巻: 22号 ページ: 1-30
• [雑誌論文] フランスの医療保険の給付範囲 (2014)
  • 著者名/発表者名: 稲森公嘉
  • 雑誌名: 健保連海外社会保障 巻: 101号 ページ: 11-19
• [雑誌論文] グローバル化時代の公法･私法関係論一ドイツ｢国際的行政法」論を手がかりとして (2014)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 社会科学研究（東京大学） 巻: 65巻2号 ページ: 9-33
• [雑誌論文] Atomenergie: Freund oder Feind des Gemeinwohls? (2014)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Harada
  • 雑誌名: Die Oeffentliche Verwaltung 巻: 67巻2号 ページ: 74-78
  • 査読あり
• [雑誌論文] 法律上の親子関係の構成原理（五）―ドイツにおける親子関係法の展開を手がかりとして― (2014)
  • 著者名/発表者名: 木村敦子
  • 雑誌名: 法学論叢（京都大学） 巻: 174巻6号 ページ: 29-59
• [雑誌論文] 地方公共団体の出訴資格―住基ネット訴訟 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト（地方自治判例百選（第４版）） 巻: 215号 ページ: 10-11
• [雑誌論文] 「富の創出に向けた税制措置」の有効性と合理性 (2013)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1455号 ページ: 47-53
• [雑誌論文] 統治機構を支える自律と統治機構の自律性 (2013)
  • 著者名/発表者名: 毛利透
  • 雑誌名: 憲法問題 巻: 24号 ページ: 7-9
• [雑誌論文] 公費負担医療と医療保険―子ども医療費助成制度をめぐって― (2013)
  • 著者名/発表者名: 稲森公嘉
  • 雑誌名: 週刊社会保障 巻: 2724号 ページ: 50-55
• [雑誌論文] 不可分利益の保護に関する行政法・民事法の比較分析 (2013)
  • 著者名/発表者名: 仲野武志
  • 雑誌名: 民商法雑誌 巻: 148巻6号 ページ: 551-571
• [雑誌論文] 行政法総論と参照領域理論 (2013)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 法学論叢（京都大学） 巻: 174巻1号 ページ: 1-20
• [雑誌論文] 行政法学から見た原子力損害賠償 (2013)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 雑誌名: 法学論叢（京都大学） 巻: 173巻1号 ページ: 1-25
• [雑誌論文] 老齢加算廃止違憲訴訟をめぐって (2013)
  • 著者名/発表者名: 尾形健
  • 雑誌名: 同志社法学（同志社大学） 巻: 64巻7号 ページ: 773-799
• [雑誌論文] 社会的正義と憲法―アメリカ合衆国における近時の動向から (2013)
  • 著者名/発表者名: 尾形健
  • 雑誌名: 月報司法書士 巻: 502号 ページ: 4-10
• [雑誌論文] 障害福祉年金と児童扶養手当との併給禁止―堀木訴訟 (2013)
  • 著者名/発表者名: 尾形健
  • 雑誌名: 別冊ジュリスト（『憲法判例百選〔第6版〕』） 巻: 218号 ページ: 294-295
• [学会発表] 消費課税とヒューマン・キャピタル
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 学会等名: 日本租税研究協会第65回税研究大会
  • 発表場所: 日本工業倶楽部，東京
  • 招待講演
• [学会発表] Verwaltungs- und Verfassungsrechtliche Aspekte der Katastrophenbewaeltigung in Japan
  • 著者名/発表者名: Hiroki Harada
  • 学会等名: Symposium: Verantwortung von Staat und Unternehmen in Katastrophenfaellen
  • 発表場所: ハーゲン通信大学，ドイツ
  • 招待講演
• [学会発表] 行政救済法のグローバル化?
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 学会等名: 台湾大学法律学院・京都大学法学研究科交流研討会
  • 発表場所: 国立台湾大学，台湾
  • 招待講演
• [学会発表] Establishing Partnership between Public and Private Law in the Globalized Policy-making and Enforcement Process: Focusing on Social Security Law
  • 著者名/発表者名: Hiroki Harada
  • 学会等名: Japanisch-Deutscher Workshop “The jurisprudence’s tasks in Globalization”
  • 発表場所: コンスタンツ大学，ドイツ
• [学会発表] Atomenergie - Freund oder Feind des Gemeinwohls?
  • 著者名/発表者名: Hiroki Harada
  • 学会等名: 日独社会科学学会
  • 発表場所: バード・ホンブルク，ドイツ
  • 招待講演
• [学会発表] 批判法学と再分配
  • 著者名/発表者名: 船越資晶
  • 学会等名: 岡山基礎法研究会
  • 発表場所: 岡山大学法学部，岡山
• [図書] 国家作用の本質と体系I―総則・物権編 (2014)
  • 著者名/発表者名: 仲野武志
  • 総ページ数: 469
  • 出版者: 有斐閣
• [図書] 演習 行政法 (2014)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 総ページ数: 540
  • 出版者: 東京大学出版会
• [図書] 伊藤眞他編『経済社会と法の役割』（「課徴金の制度設計と比例原則―ＪＶＣケンウッド事件を素材とした一考察―」149-176頁） (2013)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 総ページ数: 1350
  • 出版者: 商事法務
• [図書] 行政法講義案 (2013)
  • 著者名/発表者名: 高木光
  • 総ページ数: 367
  • 出版者: 有斐閣
• [図書] 消費税と国際課税への大きな潮流（「消費課税とヒューマン・キャピタル」52-84頁） (2013)
  • 著者名/発表者名: 岡村忠生
  • 総ページ数: 273
  • 出版者: 公益財団法人租税研究協会
• [図書] 河上正二編著『消費者契約法改正への論点整理』（「消費者契約法における締結過程の規制に関する現況と立法課題－不実告知･不利益事実の不告知･断定的判断の提供･情報提供義務を中心として」371―398頁） (2013)
  • 著者名/発表者名: 山本敬三
  • 総ページ数: 419
  • 出版者: 信山社
• [図書] 例解 行政法 (2013)
  • 著者名/発表者名: 原田大樹
  • 総ページ数: 540
  • 出版者: 東京大学出版会
• [備考] 国家による「非営利型移転」の支援と公共サービスの設計
  • URL: http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/hieiri/index.html