研究課題/領域番号 |
24243010
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和田 肇 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30158703)
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研究分担者 |
唐津 博 南山大学, 法務研究科, 教授 (40204656)
矢野 昌浩 龍谷大学, 法学部, 教授 (50253943)
根本 到 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60304135)
緒方 桂子 広島大学, 法務研究科, 教授 (70335834)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非正規雇用 / セーフティネット / デーセントワーク / 社会的包摂 / 日韓比較法研究 / 日独比較法研究 |
研究概要 |
非正規雇用問題のうち、本年度は特に労働者派遣について、労働者派遣法の制定・改正課程、いくつかの理論課題、松下PDP最高裁判決を中心とした判例・裁判例、ドイツ法、フランス法、韓国法そして今後の立法課題を分析した。現在本として出版準備中であり、5月末に日本評論社から『労働者派遣と法』として出版されることになっている。労働者派遣に関する最初の、もっとも体系的に検討を行った書物といえる。この中では、労働者派遣裁判を担当した弁護士にも分析に加わってもらい、理論と実務の架橋を行っている。 労働市場の再編とセーフティネットの課題について検討を行った。ここでは対象を社会保障法にも広げ、社会的包摂やディーセント・ワークを鍵概念としたパラダイムを模索している。成果は法律時報誌に掲載されている。 比較法研究の一つとして、第5回日韓労働法フォーラム(2012年10月、名古屋大学、使用者概念をめぐって)、第7回日韓労働法フォーラム(2013年2月、ソウル市立大学、公務員労働関係法の法律問題)を開催している。基本的な概念や枠組みに関する共同研究であり、両国がかなり共通の課題を抱えていること、そのために比較法研究が各国に有益であることが確認されている。両フォーラムとも近日中に労働法律旬報誌で公刊予定である。 比較労働法研究としては、2012年9月に日独労働法協会(研究代表者の和田が会長)主催の日独労働法シンポが開催され、その後来日したドイツ側の研究者と「労働組合と労働協約制度の新たな課題」、「日韓比較解雇法研究」というテーマで共同研究を行った。 年6回開催した労働法理論研究会を中心に共同研究を行った。そのうちいくつかは、労働法学会等での報告につながっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りにほぼ達成しているといえる。特に大きな成果は、本年5月に、これまでの共同研究の成果が書物として公刊されるに至ったことである(4月中旬段階で再校がほぼ終了している)。労働者派遣法についてのこれまでの研究は、法制定や改正過程をフォロ-するもの、あるいは実務書が中心であったが、今回出版される著書は、労働者派遣に関する基本的、理論的な課題を分析している点、重要判例や判例法理の形成を分析している点、韓国法を踏まえた比較法研究を行っている点で、貴重な研究成果となっている。 日韓比較法研究として、年2回のフォーラムを予定していたが、本年度は計画通りに開始することができた。かなりタイトなスケジュールであったが、双方の事務局がきちんと準備をし、成功裏に終了した。各フォーラムは、報告者が各国2名ずつ、それにコメンテーター等が加わり、参加者は開催国が約30名、訪問国が10数名で実施されている。幸いにも韓国側の研究者に日本語が堪能な研究者が多く、討論も順調に行われている。 日独比較法研究についても、本年度は幸いにドイツ人研究者を3名迎え、活発なシンポジウムを開催することができた。ただし、ドイツ以外のヨーロッパに関する共同研究は、残念ながら部分的なものにとどまった。 多くの研究成果を雑誌等に公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
非正規雇用問題のうち、2013年度以降は有期雇用とパートタイム労働に焦点を絞って研究を継続していく。労働者派遣に関する研究と同様の手法をとって、3年以内に著書を公刊する予定で研究を進めていくことが、4月13日に開催された13年度第1回労働法理論研究会で確認された。有期雇用については、2012年労働契約法改正に関する研究から開始する。そして、この点では立法が進んでいるヨーロッパ法、特にドイツ法と韓国法との比較法研究を行う。最後は、今後の立法のあり方についての提案を行う予定である。 13年度の第7回日韓労働法フォーラムは、14年2月に九州大学で開催予定である。テーマについては検討中であるが、「労働紛争とその解決」が提案されている。これと平行して、韓国人研究者を招聘した個別テーマ(非正規雇用問題、セーフティネット論)に関する共同研究を予定している。13年度中には、これまでの日韓比較労働法研究の成果を2冊の著書として刊行することを計画している(出版社は旬報社)。 日独比較法研究については、数名の研究者が訪独をして共同研究を行う予定である。13年9月から名古屋大学の客員教授としてボッフム大学名誉教授のヴァンク氏が来日することにあわせて、「雇用環境の変化と解雇法」に関する共同研究を行う。また、同9月にはボン大学のヴァルターマン教授を招聘し、「雇用環境の変化と標準的労働関係の行方」に関するセミナーを開催する予定である。 その他のヨーロッパの国との共同研究については、労働法理論研究会のメンバーがフランスでの在外研究を行うことを契機に共同研究の準備を進める予定でいる。こうした中で比較労働法研究の意義と課題に関する研究を進める予定である。
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