研究課題/領域番号 |
24243017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米村 滋人 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40419990)
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研究分担者 |
水野 紀子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40114665)
久保野 恵美子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70261948)
谷内 一彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192787)
森崎 隆幸 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子生物学部, 部長 (30174410)
辰井 聡子 立教大学, 法務研究科, 教授 (90327875)
磯部 哲 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (00337453)
樺島 博志 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00329905)
蘆立 順美 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60282092)
西本 健太郎 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50600227)
石綿 はる美 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10547821)
猪瀬 貴道 北里大学, 一般教育部, 准教授 (70552545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医事法学 / 生命科学研究規制 / 研究支援制度 / 国際的研究規制 |
研究概要 |
本研究課題は、生命科学研究規制の法制度に関し、各種の研究種別ごと、専門法分野ごとの検討がなされ、国際的動向への配慮も不十分であったことから、複数分野の研究者による横断的・融合的な研究手法を通じて、①最新の国際ルールの調査・検討と一般的問題状況の多分野融合的検討、②生命科学研究全般に関する新たな法政策的検討枠組みの構築、③種々の個別問題の解決案の提示を目指し、最終的に、④将来にわたり迅速に一貫した問題解決をなしうる法制度を整備することを目的とする。 本年度においては、昨年度に続く海外調査として、EU・ドイツ・フランス・英米の制度における法制度や運用実態に関する文献調査・インタビュー調査を行った。ドイツ及びEUに関しては、昨年度の現地国の訪問調査を踏まえ、補充的な文献調査を行った。フランスに関してはインタビュー調査・文献調査等を精力的に行い、国内40の人保護委員会(CPP)により医学研究の審査が行われ、2012年のJarde法により審査が強化されていることなどが判明したものの、具体的な運用のあり方等につき次年度以降に詳細を調査する必要があると考えられた。 これと併行して、わが国における生命科学研究の実態調査も昨年度に引き続き実施し、また生命科学研究の規制と支援の法制度に関する一般的制度設計の検討をも開始した。この中では、2013年に成立した「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」において新たな研究規制の枠組みが導入されたことの影響が他分野にも及び、たとえば遺伝子治療研究に関しても「細胞治療」として同法の規制に服するとの見解が提示されるなど規制枠組みの流動化が生じていることから、生命科学研究に関する全般的規制枠組みの構築の必要性がさらに高まっていることが判明した。加えて、研究不正防止目的の規制の導入も検討されており、適正な研究規制のあり方を検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究課題の実施期間の2年目に当たる。本年度は昨年度に引き続き海外・国内の情報収集(特に文献資料による情報収集)を行うことが予定されていたところ、そのような目的は概ね達成されたと考えられる。昨年度実施できなかったフランスなどの調査も実施でき、また国内の医学研究者・医学研究機関関係者からのインタビュー調査も順調に行えていることから、総じて、本研究課題の今後の検討の方向性を決めるにあたり必要な情報は収集できたと考えられる。 もっとも、フランス及び英米を中心に、調査の不十分な点がなお残存しており、また調査対象国における新たな問題状況の追加調査も必要になるため、これらに関しては、翌年度以降も調査を継続する方針である。 また、本年度から開始した、医学研究規制に関する全般的な制度設計論の検討も、きわめて順調な進行を見せた。具体的には、再生医療安全性確保法の成立に伴う規制枠組みの流動化や研究不正対策を目的とする新たな規制強化の動きなど、研究規制全般の枠組みに大きく影響する動きも政府部内を中心に急速に展開しており、これらの新たな課題状況にも相応の配慮をせざるを得なかったが、そのような新たな動きの調査・分析とあわせて、米村滋人・辰井聡子のほか数名の研究協力者とともに、制度設計論の基本的な枠組みとも言える提言を作成し、公表することができた(後掲の辰井聡子・境田直樹・髙山佳奈子・米村滋人・曽我部真裕「次世代医療の実現に向けた法制度の在り方――提言」立教法務研究7号(2014年3月)178-188頁)。このように、国内法調査・一般的制度設計論の検討は、極めて順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、以下のものを予定している。まず、平成25年度までに引き続き、法学研究者による生命科学研究の規制・支援の法制度等に関する国際調査が予定される。26年度は、フランス調査を中心に国際調査全般を統括する副研究統括に石綿はる美を充て、昨年度よりもさらに活発に研究活動を進める態勢を敷く。 これと併行して、26年度以降は生命科学研究の規制と支援の法制度に関する一般的制度設計の検討をさらに進め、新たな制度枠組みの基本指針の策定を目指す。その中では、前述の通り研究協力者の助力の下に作成した制度設計の提言をたたき台としつつ、25年度までの検討で判明した、再生医療安全性確保法の規制枠組みや、研究不正問題に関する新たな研究規制の動きなどを検討対象に取り込み、現存する課題に対する解決策をあわせ検討する形で、より一般的に、研究の規制と支援に向けた適正な制度設計のあり方を提示することを目指す。この検討にあたっては、25年度に引き続き、26年度も副研究統括として久保野恵美子を充て、活発かつ機動的に研究活動を推進する。 以上によって得られた、生命科学研究の規制と支援に関する基本方針の素案や個別的な課題に関する解決策は、昨年度までと同様に専門家による会議・研究会等において成果発表を行いつつ、種々の改善提案などを聴取するほか、26年度はその内容を一般市民に還元する公開シンポジウムを開催することを予定しており、本研究のこれまでの成果を社会に還元しつつ、一般の意見も踏まえた形で、今後予定される生命科学研究規制のあり方に関する最終提案の策定に向けた全般的な方針を決定することを予定している。これらの研究会・シンポジウム等の企画・実施に関しては、これを担当する独立の副研究統括として水野紀子を充て、成果発表を効率的に実施できる態勢を構築する。
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