研究課題/領域番号 |
24243032
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
齊藤 誠 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10273426)
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研究分担者 |
唐渡 広志 富山大学, 経済学部, 教授 (00345555)
清水 千弘 一橋大学, 経済研究所, 研究員 (50406667)
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
顧 濤 明海大学, 経済学部, 講師 (80734756)
山鹿 久木 関西学院大学, 経済学部, 教授 (50334032)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 住宅ストック / 地価形成 / ダウンサイジング / 少子高齢化 / 共同住宅 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトは、4つの側面において、都市のダウンサイジング局面において、人口動態、住宅や土地ストックの配分、地価形成の相互依存関係について精緻な実証研究を行ってきた。 第1に、首都圏のマンションデータベースを用いながら,周辺地価に負の影響を及ぼすことを明らかにしてきた。この実証結果を市区町村単位に再集計して、市町村ごとに老朽マンションの負の外部性の度合いを計測した。また、市区町村別の人口予測を用いて、共同住宅の老朽化、少子高齢化の進行、地価形成の相互依存関係を計量的に計測した。 第2に、2014年度までに4時点の住宅・土地統計調査の個票データについて整備を進め、地域経済データ(東洋経済新報社編集)とリンクする作業を行ってきた。2015年度は、住宅・土地統計調査が持っているパネル構造を利用して、全国の市区町村間の人口移動の決定要因を計測するとともに、市区町村のどのような利便性やアメニティーを求めて移動しているのかを明らかにしてきた。とりわけアメニティーの指標について範囲を拡大して分析の精度を高めてきた。 第3に、2014年度までに、仙台都市雇用圏の地価公示データと国勢調査データを用いながら、都市の縁辺部が拡大し、縮小していくプロセスにおいて、人口と地価の長期的な関係を分析するとともに,人口高齢化の地価に及ぼす影響を明らかにしてきた。人口高齢化の地価引き下げ効果は、21世紀に入って人口高齢化が著しく進んだ都市縁辺部のみで認められた。2015年度は,仙台都市雇用圏で得られた知見が,札幌市などの7つ都市圏でも認められるのかどうかを検証してきた。 第4に、東日本大震災の建物被害状況を調査した「津波被災市街地復興手法検討調査」の電子地理データを用いて、少子高齢化が進行した地域の復興の状況を計量的に分析した。これらの成果は,2015年度に書籍や論文の形で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトは、以下の点で順調に進んでいる。 第1に、①首都圏共同住宅データベース、②住宅・土地統計調査個票のデータベース、③仙台都市雇用圏および札幌市などの7つの都市圏に関する地価・人口データベース、④津波被災市街地復興手法検討調査のデータベースの構築を終えることができた。 第2に、①、③、④のデータベースについては、2013年度、2014年度,2015年度と実際の分析が大きく進んだ。具体的には、①のデータベースを用いたマンションの老朽化が周辺環境に及ぼす外部性に関する分析と、③のデータベースを用いた人口動態と地価形成に関する分析は、分析作業が大きく進んだ。④のデータベースからは、津波被災地域が少子高齢化のプロセスにあった面に焦点を当てつつ,復興政策に関する分析を公表することができた。 第3に、②のデータベースは、原データの個票数がきわめて大きいこともあって、他のデータベースに比べて整備する作業に時間を要したが、2014年度は実際の分析作業に入ることができた。2015年度には,アメニティーの指標をより精緻化した実証分析を行うことができた。 第4に、2015年度には,③のデータベースの拡張として、札幌市、静岡市、浜松市、新潟市、富山市、福岡市、北九州市について、同様の地価・人口データベースの構築作業を修了するとともに,実証分析に着手できた。 第5に、2015年度も引き続き,本プロジェクトの研究成果を行政、事業者、NPOと共有し、市民レベルで都市政策を考えていくためのフォーラムの形成について、準備作業を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
【作業成果の取りまとめ】2016年度は,作業1から作業3の研究成果の取りまとめを行い,書籍や論文を公表していく。 (作業1:首都圏の共同住宅の老朽化)過去4年間、首都圏共同住宅データベースを活用しながら、マンションの老朽化の進行の実態を明らかにするとともに、周辺地価への負の外部性を計測してきた。こうした結果を市区町村レベルに再集計するとともに、市区町村レベルの人口動態予測と重ね合わせることで、少子高齢化の進行、共同住宅の老朽化、地価形成の相互依存関係をより精緻に分析し、共同住宅の老朽化問題がどの程度深刻なのかを、時間軸と空間面の両方から明らかにしてきた。 (作業2:住宅土地統計の個票データを用いた地域間移動)2015年度までに、住宅土地統計の個票データから、ある期間(10年程度の期間)において、①移動なし、②同一市町村の移動、③同一都道府県の市町村外の移動、④都道府県外の移動について、その決定要因を特定するとともに、③や④などの市町村をまたぐ移動については、どのような利便やアメニティー(居住環境)を求めているのかを計量的に分析してきた。2016年度も引き続き、住宅土地統計の個票データが有しているパネル構造を活用した実証研究を進めていく。 (作業3:仙台市の都市圏の拡大と縮小が地価形成に及ぼす影響)仙台都市圏において明らかにしてきた都市の拡張と縮小の局面における人口動態と地価形成の関係が、他の都市で認められるのかを分析してきた。分析対象とする都市は、札幌市、静岡市、浜松市、新潟市、富山市、福岡市、北九州市に拡大した。2016年度も引き続き実証作業を継続する。 【アウトリーチ活動】作業1と作業2の成果については、東京都多摩地区の地方自治体、老朽マンション建替えに取り組んでいるNPOや不動産事業者とともに、政策フォーラムを形成しながら、研究成果を共有するアウトリーチ活動を引き続き行う。
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