研究課題/領域番号 |
24243039
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
河口 洋行 成城大学, 経済学部, 教授 (40364666)
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研究分担者 |
田近 栄治 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10179723)
菊池 潤 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 研究員 (30506481)
井伊 雅子 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50272787)
橋本 英樹 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50317682)
森山 美知子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 教授 (80264977)
尾形 裕也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90336016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 高齢者ケア / 医療介護連携 / 疾病管理 / 財政シミュレーション / プライマリケア |
研究概要 |
本研究プロジェクトの初年度である24年度は、高齢者統合ケアモデルの構築のために、以下の3つの基礎調査を実施した。 第一に、我が国の高齢者ケアの先進モデルとして、①広島県尾道市(医師会主導モデル)、②埼玉県和光市(保険者主導モデル)、③新潟県長岡市(住居事業者主導モデル)を取り上げ、この3つの事例研究を実施した。これらの先進モデルを公的介護保険制度の標準モデルと比較したところ、②の保険者主導モデルが急速な高齢化が進む都市部を前提とした場合に、好ましい特徴を備えていることが暫定的な結論として導き出された。 第二は、高齢者ケアに欠かせない初期治療(プライマリケア)体制に関する基礎調査である。このため、オランダ・英国等にて現地調査を行い、それぞれの特徴や必要な制度整備などについて検討した。我が国においては、プライマリケア体制の核となる総合診療医(general practitioner)の養成や認定制度から検討する必要があることが判明した。 第三に、高齢者医療で多く見られる慢性疾患に対する重症化防止の手法(いわゆる疾病管理)とその費用抑制効果の検討である。この点については仏国の公的医療保険において、疾病管理を導入した試行プロジェクトの責任者を招聘し、その実情や客観的評価について討論を行った。また、我が国の疾病管理の導入状況やその課題についても討論を行った。 併せて、本研究プロジェクトのもう一つの主要な課題である財政シミュレーションについては、米国で導入された医療費抑制政策の成果を、米国の医療経済学者を招聘して説明してもらい、日本での可能性について検討を行った。さらに、上記の3つの基礎調査の結果を財政シミュレーションにどのように反映させるかについても検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトは欧州連合(EU)による国際研究プロジェクトと同時並行的して実施される予定であった。しかし、欧州の経済危機によりEU側のプロジェクト・チームが研究費を獲得できなかったため、研究者間での国際連携を中心に研究を進め、一定の成果を収めることができた。 第1に、我が国の3つの先進ケアモデルとして、①広島県尾道市(医師会主導モデル)、②埼玉県和光市(保険者主導モデル)、③新潟県長岡市(住居事業者主導モデル)を事例研究として実施し、その成果を公刊学術論文として発表した。併せて、EU側の研究責任者を日本に招聘し、事例研究の成果について討論を行った。今後は、EU側(例えばフィンランド)とのケアモデル比較も含めて、更なる検討を行うことができる基礎となった。 第2は、高齢者ケアにかかせない初期治療(プライマリケア)体制の機能強化の方策を探るため、スウェーデン・デンマーク・オランダ・英国に現地調査を行い、それぞれの特徴や必要な制度整備などについて検討した。今後はその調査結果の内容を検討し、我が国のプライマリケア体制の制度設計について検討することが可能になった。 第3に、高齢者に多い慢性疾患の重症化防止の手法(いわゆる疾病管理)については、仏国の公的医療保険の導入事例について検討を行った。これにより疾病管理は入院防止やQOLの維持にある程度の効果があるものの、費用抑制効果については更なる検討が必要であることが判明した。これにより、更なる事例を検討する際の基礎的認識が醸成できた。 併せて、本研究プロジェクトのもう一つの主要な課題である財政シミュレーションについては、米国で導入された数多くの医療費抑制政策の成果が期待されたほど効果を上げていないことが共通認識として確認された。さらに、上記の3つの基礎調査の結果を財政シミュレーションにどのように反映させるかについての検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、24年度に実施した公的介護保険を中心とした高齢者ケアモデルに対する事例研究を、プライマリケア分野・疾病管理分野への拡張を試みる。その内容は、大きく3つに分かれる。第一は、前述した日本の「先進モデル」の現地調査を含めた更なる検討である。第二は、既に海外調査を実施しているプライマリケア体制のわが国での機能強化の方策の検討である。第三は、高齢者に多い慢性疾患の重症化防止の手法(疾病管理)の費用抑制効果の検討である。特に、後者2点は関連が深いことから、連携して検討を進める。 更に、財政シミュレーションについては、上記の論点から得られる影響を踏まえた、シミュレーションモデルの検討を実施する予定である。 研究に当っては、研究者がそれぞれの立場から複合的に参画する。橋本教授(東京大学)、森山教授(広島大学)が医療専門職の立場から、田近教授(一橋大学)・油井教授(成城大学・連携研究者)は財政学の見地から、菊池研究員(国立社会保障人口問題研究所)がシミュレーションの手法から、尾形教授は介護保険制度や介護施設の研究者として参加する。河口教授(成城大学)は医療経済学の見地から貢献する。事例研究に関する現地訪問やヒアリングは研究参加者が共同で実施し、異なった見地から十分な検討を行う。最終的な事例研究の取りまとめ作成は河口教授が担当する。併せて、各研究参加者は、それぞれの立場から研究論文の作成・発表を行う。
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