研究課題/領域番号 |
24243040
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
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研究分担者 |
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
石田 祐 明石工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (20455554)
露口 健司 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (70312139)
西川 雅史 青山学院大学, 経済学部, 教授 (90334143)
石田 光規 大妻女子大学, 人間関係学部, 准教授 (60453495)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2016-03-31
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キーワード | 経済政策 / ソーシャル・キャピタル / 社会関係資本 |
研究概要 |
平成24年度は,1)先行文献サーベイ,2)分析の基礎データとしての市町村別所得ジニ係数の推計,3)研究会・公開ワークショップ,4)郵送法ソーシャル・キャピタル全国調査についての実施検討会を実施した。先行文献サーベイとして、過去にわが国で実施された社会関係資本調査の設問票の比較と,ソーシャル・キャピタル研究に対する批判についての研究を実施した。 所得ジニ係数のデータベースは,総務省納税データから2006年,2007年について全国1,842市町村について作成した。所得については給与所得,営業所得,農業所得,その他所得とこれらの合計所得のそれぞれについて市町村別に,納税義務者数,平均所得,ジニ係数,ハーフィンダール指数を含んでいる。ジニ係数がソーシャル・キャピタルにどのような影響を与えるかを推計する際に用いる予定である。 2012年12月に研究会,2013年3月に研究会を実施した。研究会では上記のジニ係数の推計,教育分野におけるソーシャル・キャピタルの現状,ソーシャル・キャピタル研究に関する批判などについて報告がなされ,あわせて2013年夏に実施予定のソーシャル・キャピタル全国調査の概要について検討した。近藤克則日本福祉大学教授にもご参加いただき,全国調査設問の検討会を実施した。また,調査実施について複数の調査専門法人からの見積もりを求めた。 2013年3月15日には,本研究の研究分担者・外部の研究者8名を講師に招き,ソーシャル・キャピタルワークショップを日本大学法学部で開催し,全国から130名の参加を得て,ソーシャル・キャピタル研究の現状と課題について,報告・検討の機会を得た。ワークショップの速記録は何らかのかたちで公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.先行研究の論文サーベイ:稲葉ら(2011)は,先行研究論文のサーベイを平成19~22年度の間に実施しているが,さらに先行研究の論文サーベイをソーシャル・キャピタルへの批判論と,過去に実施されたソーシャル・キャピタル全国調査の設問の検討を中心に本研究メンバー全員で実施した。 2.市町村別ジニ係数の算出:2003年までについては,研究分担者の西川が算出した市町村別の所得ジニ係数があるが,これに加えて2006年及び2007年のジニ係数を算出した。 3.全国調査の設計と実施準備:全国調査の抱える問題点の整理を行ない,データが不足している部分を改善した。具体的には,既存の調査設問に新たに教育分野の設問を追加し,その内容を検討した。さらに,郵送法によるソーシャル・キャピタル全国調査を実施するため,業者の選定を含めて調査設計を行なう準備を実施した。複数の調査専門法人より見積もりを徴求した。 4.研究会の実施:メンバー全員による研究会を2回実施し,本研究の方針,進捗状況報告,特に次年度実施予定のソーシャル・キャピタル全国調査の設計について打ち合わせを行なった。これにより,次年度実施予定の全国調査の調査規模,地点抽出方法の検討,設問の見直しと構築,教育分野の設問を追加した。 5.公開ワークショップの開催:2013年3月15日に公開ワークショップを開催した。ソーシャル・キャピタル研究者に上記活動の成果を報告し,質疑応答の機会を得た。なお,当初の研究計画ではソーシャル・キャピタル関数に関連する変数間の相関の確認と,ソーシャル・キャピタル関数モデルの構築を行う予定であったが,本研究の交付決定が11月であったため,これは2013年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
1.ソーシャル・キャピタル全国調査(100地点1万票)を実施:男女,年齢階層(高齢者・壮年・若年の3層)の6グループ(性×年齢層)について,母集団推計が可能なサンプル数(各グループ500以上,合計4,000以上)を得られるように1万票を抽出する。抽出地点については,本研究の研究分担者である西川の市町村別所得ジニ係数推計に基づき,所得格差についての無作為抽出で実施するが,これはわが国初の方式となる。 2.データセットの作成:上記調査のデータを既存郵送法調査データと合わせてデータセットを作成する。サンプル数は過去2回の郵送法調査とあわせて7,500票を超える見込みである。なお,既存調査の第1段階の層化方式は、人口10万人以上の大都市,中都市,地方の3段階であるが,これがジニ係数に基づく層化方式と整合性があるかについて検証する。また,特に公的教育,毀損要因としての経済格差に焦点を当て,両者のソーシャル・キャピタルに対する影響を分析するためにソーシャル・キャピタル関数モデルを構築する。 3.研究会の実施:上記1と2について,メンバー全員と,関連分野の研究者を講師に招いた研究会を開催する。第1回は「郵送法調査と意識調査の留意点」について,林文東洋英和女学院大学教授を講師に招き,ご講演いただく予定である。 4.公開ワークショップの開催:年度末に公開ワークショップを開催し,ソーシャル・キャピタル研究者に上記活動の調査結果の概要を報告し,コメントをもらう。同時にソーシャル・キャピタル研究の最先端の研究報告の機会を設け,次年度以降の研究に反映させる。 5.先行研究のソーシャル・キャピタル研究への批判論についての論考を論文として公表する。
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