研究課題/領域番号 |
24243040
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
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研究分担者 |
菅野 剛 日本大学, 文理学部, 教授 (10332751)
石田 祐 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20455554)
石田 光規 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60453495)
露口 健司 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70312139)
西川 雅史 青山学院大学, 経済学部, 教授 (90334143)
小藪 明生 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (30506142)
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研究期間 (年度) |
2012-10-31 – 2016-03-31
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キーワード | 社会関係資本 / ソーシャル・キャピタル |
研究実績の概要 |
2013年に実施した社会関係資本全国調査の結果を2003年・2010年調査と比較し,より詳細に分析した。この10年間で,認知的な社会関係資本である一般的信頼は安定し,構造的な社会関係資本でも地縁活動と趣味・スポーツ・娯楽活動への参加率は大幅に上昇したが,毎日の生活の中で接する隣人,友人・知人,職場,家族,親戚等との実質的なつきあいは大幅に減少し,認知的な社会関係資本でも日常で接する組織や人々に対する特定化信頼は大幅に毀損したことを示唆する結果となった。この傾向は2010年から2013年のわずか3年の間に,一般的信頼を除いたネットワークを主体とする構造的な社会関係資本と,認知的ではあるが構造的な社会関係資本の影響を受けやすい特定化信頼が大きく変化している。この3年間の大きな変化は,東日本大震災をはじめとする天災の激化であるが,一般的には,東日本大震災は人々の間に絆の重要性を再認識させたと評価されており,絆を社会関係資本と解釈すればむしろ社会関係資本の指標は強化される方向への変化が期待された。しかし,集計値でみる限り本調査の結果は全く反対の変化を示唆している。2003年から2013年の変化は,性別,年齢階層別,年間世帯収入別でみた場合,基本的にすべての階層で有意な差がみられるので,性別,高齢化,収入の影響によるものとはいいがたい。職業別にみた場合は,有意に差がみられる職種とそうでない職種に二分されるところから,2003年調査と2013年調査との比較でみられた社会関係資本の変化は,基本的にこの間の雇用環境と労働市場の変化を反映しているのではないだろうか。 公開研究会開催:6月22日(参加者約70名),12月13日(参加者約40名)。 公開ワークショップ開催:8月29日「ソーシャル・キャピタルと経済」(参加者約60名),3月13日「社会関係資本と幸福」(参加者約110名)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
わが国における社会関係資本の長期に渡る経年変化を初めて明らかにし,かつそれが毀損している可能性,特にそれが2011年の震災後顕著であるなど,きわめて興味深い結果を得たので,最終年度を待たずに2016年度に新たな調査手法(三隅の「関係基盤想起法」)に基づく全国調査を実施するため,基盤研究(S)への継続申請を行った(不採択)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえて,以下の3点に重点を置き研究を推進する。1.社会関係資本の規定要因とその経路を確定する。2.社会関係資本からみた地域特性をわかりやすく反映する構造モデルを作成する。3.社会関係資本からみた地域の特性データを蓄積し,パターン化し,地域の特性に応じた政策対応を考える。 また,2012~14年度の成果はミネルヴァ書房より『ソーシャル・キャピタル叢書』(全7巻)として順次刊行予定である。2015年9月までに第1巻(概念と測定について),第2巻(教育)が出版予定(印刷中)である。加えて,日本行動計量学会第43回全国大会にて特別セッション(120分を2本)を実施し,当該研究分担者と計8本の研究報告を行う。
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