研究課題
2015年度は本研究の最終年度として研究成果のとりまとめと報告、外部コメントの収集、それを踏まえた上での研究成果の出版準備を行った。経済格差とSC(社会関係資本)については、認知的SCよりも構造的SCが格差、特に所得格差よりも資産格差と大きな負の相関がある、という知見に加え、市町村レベルの所得格差の拡大は認知的SCと構造的SCの両方の低下と関連しており、さらに生活満足度の低下との関連がみられるという知見を得、Social Science & Medecineに掲載された(Inaba et al. 2015)。教育とSCについては、人々のつながりを醸成するためには、学習経験の量的側面への投資よりも、キー・コンピテンシー形成という学習経験の質的側面に投資する方が、社会的成果が高まり、かつキー・コンピテンシーが高いと経済的に困窮していても孤立化しにくい、などの知見を得た(露口 2016)。地域の歴史的・文化的背景とSCについては、多摩5地区の調査から、地区ごとにSCの賦存量が異なるが、地域の歴史的経緯がSCに大きな影響を与え、総じて新たに開発された地区よりも、既存地区のほうが近隣と距離を置き、地域参加や地域への愛着も低く、したがって行政を通じた地道な啓蒙活動が重要になることが明らかになった(石田 2015)。研究班の成果は日本行動計量学会第43回大会にて報告8本、計4時間のセッションにて報告、コメントを持つとともに、年度末に公開ワークショップを開催し、150名の外部研究者・識者のコメントを得た。本プロジェクトは4年計画であるが、追加採択のため2016年3月末時点で3年4か月経過した段階であり、現在成果物の刊行を進めており、2017年3月末までミネルヴァ書房より「叢書 ソーシャル・キャピタル 全7巻」を順次公刊していく予定である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Social Science & Medicine
巻: 142 ページ: 169-182
10.1016/j.socscimed.2015.08.007