平成24、25年度の研究を発展させて、学会報告や論文投稿、また、ミニ・コンファレンス開催などで研究者間の研究打ち合わせを精力的に行った。同時に、国際的環境での財政危機と財政支援についても、本格的な研究を進めた。情報、資金、労働、財・サービスが自由に移動する環境の中で国際的財政支援の利害調整メカニズムとして想定される複数の財政制度・規律ルールについて、それぞれのメリットとデメリットを比較検討した。 所得変動と財政運営に関する理論面での研究と平行して、制度、実証面でのデータ整備とそれに基づく定量的研究に進展させた。データベースを構築して財政赤字累増と財政再建の実態を研究した。そして、整合的な定義に基づいたデータ分析を用いて、EUやアメリカ・カナダなどにおける様々な財政制度やルール、税負担や歳出の多様な実態について国際比較をすることで、実際の財政政策において、景気対抗的な財政運営と景気順応的な財政運営を識別できる実証分析を行った。とくに、政治的な効率性や民主主義の程度と景気対抗的な財政運営の関係について、OECD諸国など多くの国を対象として実証分析を行い、政治的効率性が高い国ほど、景気対抗的な財政運営が望ましいことを確認した。 本研究では、特に中央政府と地方政府との政府間財政のデータや公的企業の活動データ、民間の利益団体や政党、官僚などによる政治活動データや予算制度の透明度データ、財政規律に関するデータなどをできるだけ統一的に分類整理して、整合的な国際比較を可能とする実証研究やシミュレーション分析を行った。各国の財政の実態をデータ上整理するとともに、財政赤字累増や財政再建が経済活動にもたらす便益やコストの程度を定量的に検証することができた。
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