研究課題/領域番号 |
24243060
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
野口 定久 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (30208318)
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研究分担者 |
沈 潔 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20305808)
金 成垣 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (20451875)
原田 正樹 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40287793)
埋橋 孝文 同志社大学, 社会学部, 教授 (60213427)
後藤 澄江 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60247674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 包摂型福祉社会 / アジア型ソーシャルワーク / セーフティネット / 親密圏 / 豊かな公共圏 |
研究概要 |
本研究のテーマは、アジア域内に発生する社会的リスクに対抗するための包摂型福祉社会の再編及びアジア型ソーシャルワーク実践理論の基盤形成にある。1年目の平成24年度は主に福祉国家レジームを含む包摂型福祉社会の構成にあたって、セーフティネット(社会保障と社会福祉制度・サービス)と公共圏(政府と市民社会のガバナンス)、そして親密圏(家族・地域のソーシャル・キャピタル)の3要素及び領域のバランスのとれた包摂型福祉社会の創出をめざし、その理論化と実証化を行っていくために、アジア域内(特に、日本・中国・韓国・台湾)における各地での先駆的実践的取り組みや萌芽的実験的活動・実践を積極的に収集し、分析することを通して、実践の普遍化のための理論化に努めた。A.包摂型福祉社会の理論枠組み形成、B.親密圏の各指標の計量と質的調査研究 C. 公共圏の実証研究、D.セーフティネットのプログラム開発研究、E.アジア型ソーシャルワーク実践理論研究である。A班とB班では、本研究の方法論として用いるソーシャル・キャピタル調査の研究会を重ね、日本・韓国・台湾における地域福祉拠点型及びコミュニティ型の2種類の調査を実施した。C班は、東アジア福祉国家論・社会保障関連用語を検証し、その中で「公共」、「共助」の位置づけ及び範疇の研究会を重ねた。D班は、OECDの給付・賃金インディケーターを用いて社会保障の支出構造の比較分析を行った。E班は、日本・韓国・中国のソーシャルワーク教育のカリキュラム分析を通して地域福祉専門職人材養成のプログラム開発に着手した。アジア域内に頻発している災害や貧困格差問題、少子高齢化による社会的リスクによって生じている地域問題の解決・解消のために、現地で奮闘しているソーシャルワーカーらによるワークショップを通して、その現実と課題について整理し、アジア型ソーシャルワーク実践理論の構築をめざした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本研究テーマの初年度であり、現段階の研究の到達度は、1.『東アジアの災害時ソーシャルワーク実践方法に関する研究報告書』を発表した。「福島支援専門職チーム」の活動において福祉の多職種が自発的主体的に課題に向かって取り組んできた実績は、平時での連携がいかに有効であるかを示している。また、「スマトラ島沖地震・四川大地震・東日本大震災の被災体験と対応策を共有化する名古屋円卓会議」を開催できたことは大きな成果である。2.ソウル大学社会福祉研究所国際学術会議報告。「東アジア3カ国における家族と地域社会の変化に伴う地域福祉政策の動向と課題-日本」(2012年10月24日)。主として先進国で共通に生じている超高齢社会と少子化・人口減少社会という人口構造の危機。デフレ不況、円高、株安による経済と財政と社会保障の危機。高齢者介護・孤立化、ドメスティック・バイオレンス、自殺、犯罪、ストレス等福祉問題が多発する社会システムや家族・コミュニティの持続可能性の危機を提示した。3.中国浙江省寧波市での「地域福祉の理論と実践に関する研究フォーラム」においてバブル崩壊以降、日本の社会のかたちは大きく変容→雇用形態が激変し、格差が拡大するとともに貧困問題が深刻化し、住民の抱える生活課題が複雑化・多様化。年金や医療、所得保障も含めセーフティネット、社会保障制度の機能不全などについて分析した。
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今後の研究の推進方策 |
包摂型福祉社会の理論化をめざすために、研究メンバーによる研究推進ネットワーク会議を編成し、研究会とワークショップを行っていく。アジア域内の先駆的実践的取り組みや萌芽的実験的活動・実践を積極的に収集、分析を、以下の地域の研究者による協力を得て行っていく。また、台湾においては、介護保険制度導入に向けて準備段階にあることから、様々な角度から検証を行っていく。高齢者介護については、日本、韓国との比較を行っていく。災害・紛争などによる社会的リスクに対抗するソーシャルワーク実践に関する課題については、日本、中国、インドネシアなどの協働セッションを実施するなどしながら、奮闘するソーシャルワーカーのヒアリングを行っていき、合同シンポジウムを開催、事例検討資料集を作成する。公共圏における政府と市民社会のガバナンスがどのように協働化してきているのかについて、日本、中国、韓国、台湾、香港、シンガポールなどの国々の自治体を対象に、公的セクター・民間セクター・市民セクターの三者による公共的市民社会システムについてのローカル・ガバナンスに関するヒアリング調査を実施する。中国においては社区を中心に行っているガバナンスに関して調査を実施する。アジア型ソーシャルワーク実践理論研究については、既存のソーシャルワーク理論の再検討を、研究会を組織し行っていく。とくにコミュニテイソーシャルワーク実践事例を分析していく中で、理論化の作業を展開する。福祉関連の学会にて報告又はシンポジウムを行っていく。
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