これまで同様に、すでに確立した数種類の記憶課題と、改良したマルチニューロン活動記録法、及びデータ解析法を用い、実際にラットが多種の記憶課題を次々と遂行する際のマルチニューロン活動と局所電場電位(LFP)を記録し解析を進めた。具体的的な成果は下記のとおりである。 (1) 時間記憶課題をラットが遂行している際、背側海馬と内側前頭前野からマルチニューロン活動とLFPを同時記録した。昨年の解析に加え、特に海馬の活動について詳細に解析したところ、個々のニューロンが1~3秒の時間それぞれをコードしていることがわかった。また海馬の特定周波数帯のLFPが時間の長短がコードしていることもわかった。 (2) 順序記憶課題中の海馬ニューロン活動とLFPについても詳細に解析したところ、手掛かりに基づき特定の順序を再生する過程が背側海馬のLFPに反映していることがわかった。 (3) 海馬と内側前頭前野にまたがるマクロな神経回路の同期についてLFPにより解析したところ、特定の時間間隔や順序の再生時にリズミカルな同期が見られることを確認した。 (4) 記憶した時間間隔に基づきリズミカルに運動するインターバル・タイミング課題も導入し、ムシモールによる一時的な不活性化実験を行ったところ、タイミングに基づく運動の制御に小脳核が強く関わっていることがわかった。また、小脳核のニューロンがストップウオッチのような動作をすることで、時間のタイミングが計られていることもわかった。
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