本研究では、1.【マクロレベル】大学教育改善の視点からみた高等教育財政メカニズム、2.【メゾレベル】政府の高等教育財政政策およびインセンティブシステムとそれに呼応する大学の行動、そして3.【ミクロレベル】個別大学における財政支出・資源配置と教育アウトカムとの関連、という三つの視点から実証的な研究をおこなった。 そのための基礎作業として、個別大学の機関データベースを作成した。その一環として、平成26年秋までに、大学評価・学位授与機構から「大学ポートレート」が作成・公開される予定であり、これに基づいて大学・学部別の学生数、教員数データ等を入力し、メゾ分析を行う予定であった。しかしその公表が遅れたために、平成27年度に補助金の繰り越しを行い、それによって平成27年平成27年4月からデータ入力およびメゾ分析をおこなった。 以上の結果として以下の点を明らかにした。①私立大学については、大規模私学に特に教員一人あたり学生数の過大なところが少なくない。ただし、教員一人当たり学生数と、大規模授業の割合は直線的な関係にない。②国立大学については、教員一人当たり学生数が少ないにも関わらず、大規模授業の割合が多い。これはとくに経済学部、法学部において顕著である。③教育条件および学生の学修時間を、大学規模別、選抜性との関連で分析すると、大規模校、高選抜性校で、必ずしも教育条件がよく、また学生の学修時間が長くない。大学の理念、個性が重要な役割を果たしている。
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